田中明 (野球)

田中 明氏は、1977年12月1日に愛知県で生まれた元社会人野球選手です。投手としてプレーし、現役時代は最速148km/hの力強い速球に加え、スライダーやフォークボールといった変化球を操りました。マウンド上では気迫を前面に出すプレースタイルが特徴でした。

名古屋第一高等学校（現在の名称は中部大学第一高等学校）に進学し、高校球児として汗を流しました。2年生の夏にはチームが愛知県大会で準優勝という成績を収めています。最終学年ではエースの柱としてチームを牽引し、夏の県大会準々決勝で強豪・享栄高校と対戦。田中氏は被安打3、自責点2の粘り強い投球で完投しましたが、打線の援護がなく0対2で惜敗しました。

高校卒業後は徳山大学（現在の周南公立大学）に進み、野球を続けました。2年時にはチームとして大学選手権に出場する経験をしました。4年生の秋季リーグ戦では、その活躍が認められ、リーグのベストナインに選出されています。

大学を卒業後、2000年に社会人野球チームの一光に入社しました。1年目はその素質からプロ野球のスカウトからも注目される存在でしたが、冬場のトレーニング中に不運にも手首とヒジを同時に故障。この影響で、期待された2年目のシーズンはほとんど棒に振ることになりました。3年目にはマウンドに戻るも調子が上がらず、打ち込まれる場面が目立ちました。そして2003年の秋、4年目を迎えるにあたり、成田稔夫監督と話し合い、打撃にも自信があったことから一時的に中堅手への転向を決断します。この野手としての経験を通じて、打者と対峙する投手の心理を深く理解することができたと、後に本人が語っています。

再び投手に専念することを決めた2004年、一光は都市対抗野球大会の東海地区予選で敗退しましたが、田中氏は第5代表として本大会に出場する王子製紙から補強選手として指名されました。王子製紙の棚橋祐司監督は、彼の「1球の大切さを理解している投手」としての能力を高く評価し、主要なリリーフ、特に抑え投手として起用しました。田中氏は、この大会で出場した5試合すべてに救援登板し、無失点という完璧な投球を披露。チームがサヨナラ勝ちを収めた2試合では勝利投手となり、合計で2勝3セーブという圧巻の成績を残しました。この目覚ましい活躍が認められ、大会で最も優れた選手に贈られる栄誉ある橋戸賞を獲得しました。また、大会優秀選手（投手）にも選ばれています。

2004年都市対抗野球大会での登板内容は以下の通りです。

1回戦（対NTT北海道）：9回裏1死から登板、2/3イニングを無失点。
2回戦（対JR東日本東北）：7回表1死から登板、3と2/3イニングを無失点、勝利投手。
準々決勝（対シダックス）：7回裏1死から登板、2と2/3イニングを無失点。
準決勝（対JT）：9回表先頭から登板、1イニングを無失点。
決勝（対ホンダ）：8回表1死から登板、2と2/3イニングを無失点、勝利投手。

翌2005年も一光は都市対抗野球大会への出場権を逃しましたが、田中氏は西濃運輸から補強され、再び抑えの役割を任されました。しかし、日本新薬との1回戦では、1対0でリードして迎えた9回裏途中からマウンドに上がったものの、先頭打者への四球をきっかけに連続タイムリーを浴び、チームは逆転サヨナラ負けを喫しました。この年限りで、28歳という年齢で一光を退部。他チームへの移籍も一部で報じられましたが、タレントの峰竜太氏が番組企画で結成したチーム「ドラHOTリューターズ」に参加し、茨城ゴールデンゴールズとの試合で登板したのが最後の公式戦出場に近い形となり、以降はクラブチームなどでの登板記録は見られません。

田中明氏の主な表彰・タイトルは以下の通りです。

第50回JABA静岡大会 敢闘賞（2002年）
第75回都市対抗野球大会 橋戸賞（2004年）
第75回都市対抗野球大会 大会優秀選手（投手）（2004年）
* 社会人ベストナイン（投手）（2004年）

社会人野球界において、怪我や挫折を乗り越え、補強選手としてチームを優勝に導き、最高殊勲選手に輝いた彼のキャリアは、多くの野球ファンに記憶されています。

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