田中正俊

田中 正俊（たなか まさとし）: 中国史学者

田中正俊は、1922年11月14日に台湾の台南市に生まれた中国史・東洋史の専門家であり、東京大学名誉教授としてその名を馳せました。彼の専門分野は中国近代史であり、戦後の日本の東洋史研究において重要な役割を果たしました。

学歴と戦争体験

田中は1940年に東京府立第九中学校を卒業し、1943年には第一高等学校文科を卒業後に東京帝国大学文学部東洋史学科に入学しました。しかし、同年12月、学徒出陣として敦賀歩兵連隊に入隊し、翌年には航空兵に転属されました。シンガポールへ向かう途中、フィリピン戦線のマニラに上陸し、その後も数度にわたって戦地を転々としました。最終的には、1945年に台湾の第八航空師団に配属され、敗戦を迎えた後は1946年に帰国しました。

戦後の学究生活

戦後、田中は復学し、1950年に東京大学を卒業しました。その後大学院に進学し、1951年からは東洋文庫で研究員を兼務しました。1954年には大学院を退学し、横浜市立大学に専任講師として着任、1955年には助教授になりました。1967年には東京大学文学部の助教授に就任し、まもなく文部省の長期在外研究員としてケンブリッジ大学に派遣されました。この際、彼は特に「ジャーディンマジソン商会」に関連する資料の収集に力を注ぎました。

1973年には東京大学教授に昇任し、1983年には定年退官して名誉教授となりました。その後も信州大学にて人文学部教授として教鞭を執り、1988年には神田外語大学に招聘され、1995年に退職しました。これらの間、彼は東洋文庫理事や史学会理事長などを歴任し、学界に多大な貢献をしました。

著作と研究業績

田中は多くの著作を残しており、主なものには『中国近代経済史研究序説』（1973年）、『戰中戰後』（1990年、増訂版2001年）、『東アジア近代史の方法：歴史に学ぶ』（1999年）などがあります。また、共編著として『歴史像再構成の課題：歴史学の方法とアジア』や『近代中国研究入門』なども出版しています。これらの著作は、彼の深い歴史認識と研究方法論を反映しており、近代中国史における重要な研究文献として位置付けられています。

晩年と逝去

2002年11月4日、田中正俊は肺炎により急逝しました。享年79。彼の死は、学界における大きな損失と受け止められており、多くの同僚や学生たちから追悼されました。田中は、戦争を経て中国近代史を研究することで、日本の歴史学界に多くの影響を与え、その業績は今もなお高く評価されています。

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