田中正史

田中 正史の生涯と業績

田中 正史（たなか まさぶみ、1928年7月1日 - 2010年3月19日）は、日本の著名な作曲家であり、多岐にわたる音楽分野で貢献しました。彼は尚美学園ディプロマコースおよびピアノ科の講師、そして早稲田大学特別科学研究所の研究員としても知られています。

幼少期と音楽の道のり

田中は大阪で、事務用具製造工場を経営する家庭に生まれ育ちました。彼はわずか3歳からピアノに親しみ、5歳で永井幸次からピアノの指導を受け、音感教育を受けることになります。10歳の頃には、指揮者朝比奈隆のもとでモーツァルトのピアノ協奏曲を演奏するという経験をします。

戦時中、田中は特攻隊志望で少年航空隊に入隊し、高知にある海軍航空隊で訓練を受けましたが、戦後に復員し、家業を継ぐことが期待されて大阪府立化学工業専門学校（後の大阪府立大学工学部）に進学しました。しかし、彼の心の中には音楽への情熱があり、この時期にオーケストラのスコアを研究しながら、アルバイトでピアニストとして活躍しました。特に17歳の時、井口基成の演奏会に触発され、音楽家としての道を歩む決意を固めます。

これに続いて、山田康子のもとで基礎技術を磨きつつ、井口の弟子となります。彼はその後、井口に才能を見出され、深井史郎に作曲を学ぶことでピアニストから作曲家へと転身しました。

音楽活動

田中の音楽活動は多岐にわたります。モダンダンスやバレエなどの舞台音楽から、テレビドラマ、CMソングまで、幅広いジャンルで作曲を手がけました。特に彼は、関西弁を劇伴として音楽に初めて取り入れた作曲家として知られています。また、ワールドミュージックの要素を早くから取り入れており、民族楽器を駆使した曲作りで高く評価されています。

彼の代表作には、オペラ「羽」、バレエ「進歩と調和」、テレビドラマ音楽「うず潮」や「横堀川」などがあります。また、彼の作品はアニメーションやラジオドラマにも多く用いられ、特に『黄金バット』や『妖怪人間ベム』などが名作として名を馳せています。数多くの歌謡曲も手がけており、中でも笑福亭仁鶴の「おばちゃんのブルース」や和田アキ子の「世の中さかさま」が知られています。

人間関係と家族

田中は大阪時代に近所に住んでいた詩人・榊莫山との交流があり、彼の影響を受けたとされています。また、彼の家族関係には、筑波大学の元副学長で工学者の南日康夫がいとこの夫にあたります。

著作と影響

彼は著書「わが師井口基成 どてら姿のマエストロ」を1997年に発表しており、この中で自身の音楽人生や師匠との関係について触れています。田中正史の楽曲や活動は、単に音楽界の枠を超え、日本の文化にも多大な影響を与えました。彼の作品は今なお多くの場面で愛され続けています。音楽の持つ力を最大限に引き出した田中の業績は、後世にわたり永遠に語り継がれることでしょう。

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