田中玄宰

田中玄宰（たなか はるなか）

田中玄宰は、江戸時代後期の会津藩家老として、会津藩の発展に大きく貢献した人物です。寛延元年（1748年）に田中玄興の子として生まれ、初名は玄堅（はるかた）と名乗りました。

生涯

12歳で家督を継いだ玄宰は、天明元年（1781年）に34歳で家老に任じられ、会津藩5代藩主・松平容頌、6代藩主・容住、7代藩主・容衆の3代に仕えました。当時、会津藩は天明の大飢饉による深刻な打撃を受けており、財政は困窮、領民は疲弊していました。

玄宰は、このような状況を打破するため、藩政のあらゆる分野にわたる改革を断行しました。財政再建、産業振興、軍制改革、教育改革など、その取り組みは多岐にわたりました。特に力を注いだのは、疲弊した領民の救済と藩政の立て直しでした。藩主・容頌に改革を訴えましたが、当初は受け入れられず、一時辞職するも、その後復帰し「天明の大改革」を主導しました。

殖産興業では、農民や町人に養蚕、薬用人参、紅花、藍、棉などの栽培や、漆器、酒造り、絵ろうそくなどの製造を奨励し、会津地方の伝統産業の基礎を築きました。また、藩校日新館の創設に尽力し、教育改革を推進することで、人材育成にも力を入れました。これらの改革によって、会津藩は天下に名を知られる雄藩へと発展を遂げました。

その手腕は隣藩にも聞こえ、白河藩主で江戸幕府老中も務めた松平定信は家臣に対し、「会津の田中三郎兵衛に笑われることなかれ」と訓戒したと伝えられています。

文化5年（1808年）には、ロシアの攻撃に備えて約1600名の藩士と共に樺太警備にあたり、その活躍は幕府や諸藩から高く評価されました。しかし、同年、樺太にて61歳で死去しました。遺言により、墓は鶴ヶ城と日新館を見渡せる小田山の山頂に設けられています。

家督は長男・玄成が相続しましたが早世したため、一瀬家の養子となっていた次男・玄古が家に戻り、跡を継ぎました。幕末の会津藩家老である田中玄清は長男玄成の孫にあたり、政治活動家の田中清玄は玄宰の叔父である玄通の子孫です。また、清玄の二男は早稲田大学総長を務めた田中愛治です。

大正4年（1915年）、その功績が認められ、従五位を追贈されました。

田中玄宰を扱った作品

中村彰彦『花ならば花咲かん』（PHP研究所）

関連項目

日新館

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