田中純一郎

田中純一郎（たなか じゅんいちろう）

生涯

田中純一郎（本名：松倉寿一）は、1902年12月3日に群馬県で生まれ、1989年3月26日に86歳で亡くなった日本の映画史家、映画評論家、編集者です。

大正初年に上京し、旧制中学校に通っていた頃から映画に夢中になります。卒業後に映画界に進むことを希望しますが、祖父の意向で糸屋に奉公することになりました。しかし、奉公中も映画への情熱は冷めず、簿記学校に通う傍ら映画雑誌に投稿を続け、そこで後の映画評論家である芥川柳三（飯島正）や古川緑波と知り合います。1919年には、スペイン風邪に罹患し、生死の境をさまよった経験も持っています。

東洋大学在学中に批評家としてデビューし、卒業後の1925年には雑誌『映画時代』、1930年には『キネマ週報』の創刊編集に参加しました。第二次世界大戦中は東宝映画に在籍し、地方巡回上映などを担当しました。1940年から1943年にかけては、幻の撮影技師、土屋常吉の足跡を追う旅をしました。終戦後は、『キネマ旬報』の編集長や日本大学芸術学部の講師を歴任しました。

1957年には、代表作である『日本映画発達史』を中央公論社から発表。これは、第1巻「活動写真時代」、第2巻「無声からトーキーへ」、第3巻「戦後映画の解放」からなる大著で、日本映画史研究における重要な貢献となりました。1966年には、これらの功績により藍綬褒章を受章。1965年から1967年には『キネマ旬報』誌に『秘稿日本映画』を連載しました。

1968年には、『日本映画発達史』第4巻「史上最高の映画時代」を上梓し、同年の「映画の日」には特別功労賞を受賞しました。1976年には、第5巻「映像時代の到来」を刊行し、『日本映画発達史』全5巻が完結。同年には、その功績が認められ日本映画ペンクラブ賞を受賞しました。1985年には、松竹創業90年を記念して『松竹九十年史』を編纂しました。この著書は、松竹の歴史を経営者視点だけでなく、客観的な視点から捉えた点が評価されています。

晩年は東京都練馬区南大泉に住み、都心での試写会に出席するため、常に電車の定期券を携帯していたそうです。

死後

1998年、出身地の群馬県新田町で「田中純一郎記念日本映画史フェスティバル」が開催されました。このフェスティバルは2002年まで毎年開催されました。また、2004年には未刊だった『秘稿日本映画』が『秘録・日本の活動写真』として出版されました。

受賞・受章歴

1966年 - 藍綬褒章
1968年 - 「映画の日」特別功労賞
1976年 - 日本映画ペンクラブ賞（著書「日本映画発達史」全5巻）

主要な著書

『チヤツプリン「街の灯」』（1932年）
『日本映画史 第1巻』（1948年）
『日本映画発達史』（1957年～1976年）
第1巻「活動写真時代」
第2巻「無声からトーキーへ」
第3巻「戦後映画の解放」
第4巻「史上最高の映画時代」
第5巻「映像時代の到来」
『宣伝　ここに妙手あり』（1958年）
『日本の映画 少年産業博物館23』（1960年）
『大谷竹次郎』（1961年）
『永田雅一』（1962年）
『日本教育映画発達史』（1979年）
『映画なんでも小事典』（1980年）
『日本映画史発掘』（1980年）
『活動写真がやってきた』（1985年）
『松竹九十年史』（1985年）
『秘録 日本の活動写真』（2004年）

フィルモグラフィ

『大乗の国』（1940年） - 脚本
『日本漫画映画発達史 漫画誕生』（1971年） - 企画
『日本漫画映画発達史 アニメ新画帖』（1973年） - 企画
『映画女優』（1987年） - 映画史監修

外部リンク

Junichiro Tanaka - IMDb（英語）
田中純一郎 - 日本映画データベース
田中純一郎 - KINENOTE


田中純一郎は、その生涯を映画に捧げ、日本映画史の研究に多大な貢献をしました。彼の著作は、今なお映画史を学ぶ上で重要な資料となっています。

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