田中裕明賞

田中裕明賞について

田中裕明賞（たなかひろあきしょう）は、俳人である田中裕明の偉業を称え、詩歌に特化した出版社「ふらんす堂」によって2009年に創設されました。この賞は、満45歳以下の俳人が発表した句集を対象にしており、自薦および他薦を問わず応募が可能です。特に珍しい点として、自費出版や手製本での応募も受け付けていることが挙げられます。ただし、電子版の応募は認められていません。

この賞の選考委員は設立以来、定期的に変動しており、参加者それぞれが公平に選考することが求められています。具体的には、第1回から第7回までは石田郷子が選考に関わり、その後は小川軽舟や岸本尚毅、津川絵理子、四ッ谷龍なども選考委員として名を連ねています。第11回以降は佐藤郁良や関悦史、高田正子、高柳克弘が新たに参画しており、選考の公正さを維持しています。

選考の際には、各委員が自らが出版に関与した句集を推すことは避けられており、これにより価値ある句が公平に評価される環境が整えられています。例えば、第1回の受賞者は高柳克弘で、彼は「鷹」という集団に所属していますが、同じ主宰の小川軽舟は彼を推すことはありませんでした。

受賞者の一覧を見ると、2010年に始まったこの賞は、各年の受賞句集が多彩な特色を持つことが特徴的です。第2回（2011年）には該当句集がなく、次年度の2012年には関悦史が「六十億本の回転する曲がつた棒」で受賞し、その後も津川絵理子の「はじまりの樹」や榮猿丸と西村麒麟の共同受賞といった異彩を放するケースが続きました。受賞作品は毎年恒例の授賞式で発表され、その後、選考過程や授賞式の詳細、さらには記念吟行句会がまとめられた小冊子として発表されています。

2020年以降も、田中裕明賞の魅力は続き、受賞者には生駒大祐の「水界園丁」や、如月真菜の「琵琶行」といった作品が選ばれています。2023年には岩田奎の「膚」が受賞しました。さらには2024年には浅川芳直や南十二国が受賞予定であり、今後の動向にも注目が集まります。

この賞は、若手俳人たちの才能を発掘し、彼らの作品を広める機会を提供する重要な役割を果たしています。また、賞の設立当初からの理念である公正な評価を維持し続ける努力が、多くの詩歌ファンや俳人から支持されているのです。若手の創作活動を促進し、これからも新たな才能が育まれる場所であり続けることを願っています。

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