田中賢一 (軍人)

田中賢一は、1918年（大正7年）に静岡県で生まれ、2019年（令和元年）7月2日に101歳で亡くなった、旧日本陸軍の軍人であり、後に陸上自衛官となった人物です。陸軍士官学校52期を卒業し、最終階級は陸軍では少佐、陸上自衛隊では陸将補にまで昇進しました。また、特攻隊戦没者慰霊顕彰会『特攻』の元編集長としても知られています。

軍人としての経歴

1939年（昭和14年）に陸軍士官学校を卒業後、騎兵科の将校として軍歴をスタートさせました。1941年（昭和16年）には、挺進練習部へ志願し、南方へ出征。その後、挺進練習部本部で教育訓練幕僚として勤務しました。1944年（昭和19年）には、第一挺進戦車隊長に任命されています。

戦後は公職追放を経験しましたが、1954年（昭和29年）に陸上自衛隊に入隊。空挺団が創設されると、旧挺進部隊の伝統を継承することに尽力し、空挺団の基礎を築きました。1958年（昭和33年）には空挺団研究科長、1962年（昭和37年）には空挺団普通科群長を歴任しました。その後、1964年（昭和39年）には第3戦車大隊長兼今津駐屯地司令、第1空挺団副団長を歴任し、1966年（昭和41年）には全日本空挺同志会理事長に就任しました。1972年（昭和47年）に陸上自衛隊を退職（陸将補）。

退官後の活動

退官後は、偕行社をはじめとする旧軍の各種戦友会で活動。空挺同志会では会長などの要職を歴任しました。特に特攻隊戦没者慰霊平和祈念協会（現・特攻隊戦没者慰霊顕彰会）では、会報『特攻』の編集長として20年にわたり、特攻隊戦没者の情報収集、公開、慰霊・顕彰活動に尽力しました。

軍事と戦史への貢献

騎兵科将校時代には、軍馬から近代的な戦車への転換期を経験しました。落下傘部隊は航空と歩兵が主力であり、戦車を輸送する大型航空機の開発が実戦に間に合わなかったため、部隊ではなく司令部での勤務が多かったようです。しかし、そのおかげで、挺進団全体の状況を詳細に把握し、戦中・戦後を通じて戦没者及び生還者の情報・資料収集に努めました。

特に、「義号作戦」に関する詳細な分析は高く評価されており、義烈空挺隊の詳細を後世に伝えた功績は非常に大きいとされています。これらの活動から、田中賢一は戦史研究においても重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

著書

田中賢一は、多数の著作を残しており、自身の経験や研究成果を後世に伝えています。

• - 『陸軍挺進部隊外史』(2005.8)
• - 『高千穂部隊回想』(2002.2)
• - 『世界歩兵総覧』(1988.5)
• - 『現代の空挺作戦 : 世界のエアボーン部隊』(1986.2)
• - 『正義と人道の世紀を : 軍隊と戦争を知らない世代へー一兵士の遺言』(1985.11)
• - 『大空の華 : 空挺部隊全史』(1984.10)
• - 『レイテ作戦の記録』(1980.2)
• - 『大いなる賭 : 空挺戦史余話』(1978.2)
• - 『帰らぬ空挺部隊 : 沖縄の空にかける墓標』(1976)

これらの著作は、当時の軍事戦略や戦場の様子を詳細に記録しており、貴重な歴史的資料となっています。

田中賢一の生涯は、激動の時代を軍人として生き抜き、戦後は平和への貢献に尽力した人物として、深く記憶されるべきでしょう。

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