田中道雄

田中 道雄（たなか みちお）

田中道雄氏は、日本の著名な国文学者であり、佐賀大学の名誉教授です。1932年4月25日に韓国の京城府（現在のソウル特別市）に生を受け、長崎県で育ちました。学術的なキャリアを通じて、主に近世の日本文学、特に俳諧の研究において顕著な業績を残しています。

経歴

田中氏は1958年に佐賀大学文理学部（文科系）を卒業後、学問への探求を続け、1963年には九州大学大学院国文学博士課程を単位取得満期退学しました。その後、教育者としての道を歩み始め、1965年に有明工業高等専門学校の講師に着任。翌1966年には九州工業大学の助教授に就任し、研究と教育の両分野で経験を積みました。

1971年には鹿児島大学に移り、助教授を務め、1977年には同大学の教授に昇任。さらに1981年からは母校である佐賀大学に教授として着任し、長年にわたり国文学の研究教育に尽力しました。1998年に佐賀大学を定年退官した後は、同大学の名誉教授の称号を授与されました。学術的な探求は続き、2001年には九州大学から文学博士号を取得。この博士号は、「蕉風復興運動と蕪村」をテーマとした研究に基づいて授与されたものです。

研究分野と業績

田中氏の主要な研究対象は、江戸時代の日本文学、とりわけ俳諧です。中でも、与謝蕪村とその周辺の俳人たち、そして蕉風（松尾芭蕉の俳風）の復興を目指す運動に深い関心を寄せ、独創的な研究を展開しました。博士論文であり、後に書籍化された『蕉風復興運動と蕪村』は、この分野における重要な研究成果として知られています。この著作では、江戸中期における俳諧の流れや、蕪村がいかにして蕉風を再興し、新たな俳諧の時代を築いたのかについて、詳細な分析と考察が示されています。

また、研究者としてだけでなく、貴重な古典文学の校注にも携わっています。特に、近世俳諧の重要な資料である『天明俳諧集』（新日本古典文学大系）では、山下一海、石川真弘、田中善信の各氏と共に校注を担当し、研究者や学生にとって利用しやすい形で資料を提供することに貢献しました。

さらに、江戸時代の俳人である蝶夢（ちょうむ）の作品を集成した『蝶夢全集』の編纂にも参加。田坂英俊氏、中森康之氏と共に共同で編著を務め、蝶夢研究の基礎資料を提供しました。

その他の活動

学術活動に加えて、田中氏は俳聖・芭蕉ゆかりの地として知られる義仲寺の総代も務めています。これにより、文化財の保護や俳諧文化の普及にも関与していることがうかがえます。

著作

『蕉風復興運動と蕪村』岩波書店, 2000年

共著・編著

『天明俳諧集』（新日本古典文学大系）山下一海, 石川真弘, 田中善信共校注, 岩波書店, 1998年
* 『蝶夢全集』田坂英俊, 中森康之共編著, 和泉書院, 2013年

田中道雄氏は、長年にわたる大学教育と、近世俳諧、特に与謝蕪村に関する深い研究を通じて、日本の国文学研究に多大な貢献をした学者です。その著作や校注は、後進の研究者にとって貴重な指針となっています。

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