田中郁三

田中郁三は、20世紀後半の日本の光化学研究を牽引した化学者であり、東京工業大学の名誉教授です。彼の研究は、光化学の基礎を築き、分子の電子状態の精密な測定や光イオン化質量分析法の開発など、多岐にわたります。

1926年1月13日に生まれた田中郁三は、武蔵高等学校を経て、東京帝国大学理学部化学科を卒業しました。その後、東京工業大学大学院で研究を続け、助教授、教授と昇進し、東京工業大学の理学部長、学長を歴任しました。学長退任後は、学位授与機構長、根津育英会武蔵学園長、根津育英会理事長などの要職を務めました。

田中郁三の業績として特筆されるのは、光イオン化質量分析法の開発です。この手法は、光のエネルギーを利用して分子をイオン化し、その質量を分析することで、分子の構造や性質を詳細に調べることができます。また、分子光化学の分野では、分子の電子状態を精密に測定する先駆的な手法を開発し、光化学反応のメカニズム解明に大きく貢献しました。

これらの業績により、田中郁三は数々の賞を受賞しています。1977年には日本化学会賞、1984年には東レ科学技術賞を受賞し、1989年には紫綬褒章、2001年には勲二等旭日重光章を受章、2005年には文化功労者に選ばれました。

2015年2月16日、心筋梗塞のため89歳で亡くなりました。没後、従三位が贈られました。田中郁三の功績は、光化学の分野に深く刻まれ、後進の研究者たちに大きな影響を与え続けています。彼の開発した技術や研究手法は、今日の光化学研究においても重要な役割を果たしており、その遺産は計り知れません。

略歴
1944年 武蔵高等学校卒業
1947年 東京帝国大学理学部化学科卒業
1949年 東京工業大学大学院特別研究生前期終了
1951年 東京工業大学助教授
1954年 東京大学理学博士
1958年 東京工業大学教授
1975年 東京工業大学理学部長
1985年 東京工業大学学長（～1989年）
1991年 学位授与機構長
1998年 根津育英会武蔵学園長
2000年 根津育英会理事長
2015年2月16日 心筋梗塞のため死去

受賞・叙勲
1977年 日本化学会賞
1984年 東レ科学技術賞
1989年 紫綬褒章
2001年 勲二等旭日重光章
* 2005年 文化功労者

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