田原親貫

田原親貫（たばる ちかつら）

田原親貫は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将で、豊後国（現在の大分県）を拠点とした大友氏の家臣です。大友氏の庶流である田原氏の当主として、激動の時代を駆け抜けました。

生涯

田原親貫の出自については、豊前長野氏の一族である長野助盛が父であると伝えられています。大友氏の家臣であった田原親宏の婿養子となり、田原氏を継承しました。

天正6年（1578年）、同族の田原親賢（後の紹忍）と共に日向国への遠征に参加しますが、耳川の戦いで大友軍は島津氏に大敗を喫し、親貫も退却を余儀なくされました。

大友氏への謀反

天正7年（1579年）9月に養父の親宏が亡くなると、その年の暮れに親貫は大友氏に対して謀反を起こします。その背景には、田原紹忍が大友宗麟から寵愛を受け、家中での勢力を拡大していたことへの反発がありました。

宗麟は、親宏から没収した国東・安岐の所領を親宏に返還する際、田原紹忍と共謀して、自身の子である大友親家を田原宗家に送り込み、親宏の跡を継がせようと画策していました。親宏が病死した後にこの策略を知った親貫は、激しく反発し、ついに謀反を決意したとされています。

親貫は軍船を率いて府内を襲撃しようと試みましたが、嵐のために上陸できず、撤退しました。しかし、その直後に田北紹鉄も謀反を起こし、府内は大混乱に陥ります。宗麟は事態を収拾するため、嫡男である大友義統に和平交渉を命じましたが、交渉は決裂しました。

大友氏との対決

親貫は引き続き大友氏との対決姿勢を崩さず、安岐城と鞍懸城を拠点に大友軍を迎え撃つ作戦を展開します。鞍懸城を拠点としたのは、自身の出身である筑後の秋月氏や豊前の長野氏、そして安芸の毛利氏からの支援を見込んでのことでした。

この頃、大友氏の家臣の中でも、当主である義統の指導力に不安を覚える立花道雪らは、義統の引退と側近の追放、そして宗麟の復帰を訴えました。最終的に、宗麟が義統の後見を行うことで意見がまとまり、ようやく親貫の謀反に対処できる体制が整いました。大友軍は宗麟の指揮のもと、2月に大友親家に柴田礼能を付けて雄渡牟礼城に入れ、義統を速見郡へ出動させます。宗麟自身は日出荘辻間に出陣し、全軍の指揮を執りました。

天正8年（1580年）7月には安岐城への攻撃が開始されます。大友義統・親家軍は城を攻めましたが、親貫軍の激しい抵抗により、攻略は難航しました。安岐城には海路からの補給が行われていたため、宗麟は村上水軍に救援を要請し、海上からの封鎖を試みました。

毛利氏への救援要請と落城

これに対し親貫は、重臣である如法寺親並に命じて、安芸国の毛利輝元と小早川隆景に救援を求めました。毛利氏の救援が決定すると、親貫は交渉を成功させた如法寺親並父子に田原の姓を与えたとされています。

しかし、同年8月末頃、安岐に上陸しようとした毛利軍の軍船は、若林鎮興率いる大友水軍の攻撃によって撃退されてしまいます。さらに、同年9月には安岐城が落城し、豊前国の国人衆である城井氏や長野氏は鞍懸城へ救援に向かいましたが、田原親賢、佐田鎮興らの軍によって敗北しました。孤立無援となった鞍掛城も、10月には大友軍の総攻撃によって落城しました。秋月種実も豊後国への援軍を派遣しましたが、鞍懸城陥落の報を聞き、撤退しました。

親貫の最期

親貫の最期については、鞍懸城落城とともに自害した、秋月種実を頼って逃亡した、逃亡の途中に宇佐郡の時枝氏によって殺害されたなど、諸説あります。実際、大友義統も親貫の死を確認できておらず、親貫が逃亡したと見て捜索を命じています。

親貫は当時10代後半であったと推測されており、この謀反は親貫個人の意思だけでなく、田原家全体の意向が反映されたものであったと考えられます。親貫の妻もこの謀反の最中、鞍懸城で病死したと伝えられています。

この戦いの結果、田原宗家には大友親家が入り、田原親家と名乗ることになりました。

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