田口鉄道デキ50形電気機関車

田口鉄道デキ53形電気機関車

田口鉄道デキ53形電気機関車は、田口鉄道が自社の鉄道路線開業に向けて新たに製造した40トン級の電気機関車です。この機関車は1両のみが製造され、田口鉄道の系列会社であった鳳来寺鉄道や豊川鉄道が保有していた同様の機関車にちなんでデキ53と呼ばれました。田口鉄道が豊橋鉄道に合併された後も、この機関車は従来の形式番号で運用され、田口線が廃止されると渥美線に転用されました。

製造の背景

田口と海老の集落は、江戸時代における重要な宿場町として知られ、地域の繁栄を支えてきました。しかし、明治後期から大正にかけて、豊川鉄道と鳳来寺鉄道線が建設される際に、この2つの集落が両鉄道のルートから外れるという事態が発生しました。そのため、1925年には新たな蒸気鉄道の建設が計画され、地域の森林資源を生かすために宮内省の支援を得て鉄道が開業されることになったのです。

1929年、田口鉄道は鳳来寺口から三河海老間の11.6kmを開業し、その際、貨物輸送用の電気機関車として新型の40トン級機関車を製造することが決定しました。この機関車は豊川鉄道の最新型機（デキ52）を基に設計されました。

デキ53形デキ53の概要

デキ53は1929年4月に日本車輌製造によって製作され、電気機器に関しては東洋電機製造が担当しました。田口鉄道線は他の2社と車両共通での運用を考慮していたため、デキ53は1両だけが製作されました。

車体設計

この機関車は、デッキ部分がない豊川鉄道デキ52に似た箱形鋼製車体を持ち、側面には乗務員用の扉が設けられています。機関車の妻面は3枚の窓で構成され、運用のために砂箱が設置されています。また、発電ブレーキを搭載しているため、側面には多数の通風グリルが取り付けられ、屋根にも通風口が設けられています。このような設計は、発電ブレーキ使用時の放熱対策として重要でした。

主な機器

田口鉄道線が直流1,500Vで電化されるにあたり、デキ53も同じく直流1,500V専用設計となっています。主電動機には、同じく東洋電機製造のTDK-522-Aを使用し、各台車に2基ずつ装着しています。制御器には東洋電機の電動カム軸式を採用し、電源の供給をするための電動発電機も搭載していました。

運用と歴史

運用当初は豊川鉄道と鳳来寺鉄道の車両と共通して使用されましたが、1943年には江島駅近くで電車との衝突事故に遭い修理を余儀なくされました。戦時中、デキ53は他の鉄道に貸し出され、名鉄や国鉄の機関車としても運用されました。その後、1952年からは田口鉄道専用となり、木材の運搬のために活躍しました。しかし、事故が相次ぎ最終的には1984年に廃車され、解体されました。

同系機および姉妹機

デキ53形の同系機には、豊川鉄道のデキ52形や伊勢電気鉄道の521形が存在します。特に伊勢電気鉄道521形はデキ53と非常に似た構造を持ち、実質的な姉妹機と言えます。このように、田口鉄道デキ53形はその独自の開発経緯と運命を持ちながらも、他の鉄道に多大な影響を与えた存在です。

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