田園住居地域

田園住居地域：穏やかな田園と調和した生活空間

田園住居地域は、都市計画法において定められた用途地域の一つです。この地域は、都市の拡大によって失われつつある自然環境と、良好な住環境の両立を目指し、農地や農業関連施設と調和した低層住宅の建築を促進する目的で設けられています。具体的には、緑豊かな環境の中で静かな生活を送りたいと望む人々にとって魅力的な居住空間を提供することを目指しています。

用途制限：地域性を活かした建築物利用

田園住居地域では、建築物に関する様々な用途制限が設けられています。これらの制限は、地域全体の調和と、良好な住環境の維持を目的としています。主な制限内容は以下になります。

住宅関連

• - 一戸建て住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿などは原則として許可されます。
• - 兼用住宅（住宅と他の用途を兼ねる建築物）は、非住宅部分の床面積が50㎡以下、かつ建築物全体の延べ面積の半分未満であれば許可されます。非住宅部分の用途は、第一種低層住居専用地域と同等の制限が適用されます。

店舗等

• - 店舗は原則2階建てまでです。
• - 許容される店舗の種類と規模は、地域特性を考慮して厳しく制限されています。例えば、地域で生産された農産物を販売する店舗や、それを材料にした料理を提供する飲食店は、他の店舗よりも大きな規模が認められる場合があります。それ以外の店舗については、床面積が150㎡以下という制限があります。
• - 理髪店、クリーニング店、質屋などは、150㎡以下の規模に制限されます。
• - 洋服店、畳店、自転車店などの小規模な店舗も、作業場の面積や機械設備の出力が制限されます。
• - パン屋や米屋などの食品製造業も、地域で生産された農産物を原材料とする場合、規模の制限が緩和されます。

その他用途

• - 事務所、ホテル、旅館、遊戯施設、風俗施設、展示場、運動施設などは、原則として建設できません。
• - 幼稚園、小学校、中学校、高等学校などの教育施設は許可されますが、大学や高等専門学校などは許可されません。
• - 図書館、美術館、博物館、病院（診療所を除く）、老人ホーム、福祉施設などは、規模や用途によって許可される場合があります。
• - 倉庫については、農産物や農業資材を貯蔵するための倉庫は許可されますが、その他の倉庫は許可されません。
• - 車庫についても、建築物全体の延べ面積や規模、公告対象区域の有無によって制限が異なります。
• - 危険物の貯蔵や処理、工場などの建設は、原則として禁止されています。
• - 特定行政庁が、良好な住居環境を害するおそれがないと認めた場合、または公益上やむを得ない場合に限り、例外的に許可される場合があります。

建ぺい率と容積率：建築物の規模制限

田園住居地域では、建ぺい率と容積率が制限されています。建ぺい率は、敷地面積に対する建築面積の割合を示し、容積率は、敷地面積に対する建築物の延べ面積の割合を示します。これらの数値は、都市計画によって30％～60％（建ぺい率）、50％～200％（容積率）の範囲内で定められます。また、前面道路の幅員が狭いと、容積率がさらに制限される場合があります。角地や防火地域内にある耐火建築物については、建ぺい率の制限が緩和される場合があります。

その他の制限

• - 建築物の高さには、10mまたは12mの制限が設けられる場合があります。
• - 高さや階数が一定の基準を超える建築物については、日影規制が適用される場合があります。
• - 敷地境界から建物の外壁までの距離（後退距離）にも制限が設けられる場合があります。

税制措置：農地保全のための優遇措置

田園住居地域では、農地の保全を促進するため、固定資産税、相続税、贈与税、不動産取得税などに関する税制上の優遇措置が設けられています。具体的には、市街化区域内の農地について、固定資産税・都市計画税の減額や、相続税・贈与税・不動産取得税の納税猶予が適用される場合があります。これらの措置は、農地の有効活用と、良好な田園風景の保全に貢献することを目的としています。

まとめ

田園住居地域は、自然環境と都市機能の調和を目指した、独特の用途地域です。用途制限、建ぺい率・容積率、その他制限、税制措置など、様々な規制によって、良好な住環境と農業の共存が図られています。この地域で建築を計画する際には、これらの規制内容を十分に理解し、遵守することが重要です。

もう一度検索