田島征彦

田島征彦：型染め絵本の第一人者、激動の人生と豊かな創造性

田島征彦（たじまゆきひこ）は、1940年大阪府堺市に生まれた日本の絵本作家です。著名な絵本作家である双子の兄弟、田島征三氏とは同年同月同日生まれですが、苗字の読み方が異なります。征三氏が「たしま」と読むのに対し、征彦氏は「たじま」と名乗っています。これは、先に世に出た征三氏と区別するため、意図的に読み方を変えた結果です。

激動の幼少期と芸術への道

征彦氏の父は軍人でした。中国でスパイを斬殺したという事件が新聞報道され、戦犯として追及されることを恐れた父は、戦後まもなく家族を高知県に転居させました。そのため、征彦氏は幼少期を高知で過ごしました。

1963年、京都市立美術大学（現京都市立芸術大学）染色図案科を卒業、1965年には同専攻科を修了しました。卒業後は京都府船井郡に居住し、芸術家としての道を歩み始めます。

型染め絵本のパイオニアとしての活躍

1975年には京都府洋画版画新人賞を受賞し、1976年から型染めによる絵本の制作を始めました。1978年には代表作である『じごくのそうべえ』で第1回絵本にっぽん賞を受賞し、大きな注目を集めます。

その後も数々の賞を受賞しました。1981年には『祇園祭』で世界絵本原画展金牌を受賞し、『火の笛』、『ありがとう』で小学館絵画賞を受賞。1985年には『てんにのぼったなまず』で世界絵本原画展で2度目の金牌を受賞するなど、その才能は高く評価されました。

1988年には新潟市美術館で双子の兄弟である田島征三氏との合同展「田島征彦・征三展」を開催。1989年には『はじめてふったゆき』でライプツィヒ国際図書デザイン展銀賞を受賞するなど、国内外で活躍しました。

1995年には35年間の画業をまとめた自伝的作品集『憤染記』を出版。2015年には『ふしぎなともだち』で第20回日本絵本賞大賞を受賞し、2023年には『なきむしせいとく』で第54回講談社絵本賞を受賞するなど、近年も精力的に作品を発表し続けています。

代表作と多様な共作

田島征彦氏の作品は、型染めの独特な技法と、ユーモラスで心温まるストーリーが特徴です。代表作『じごくのそうべえ』は、シリーズ化され、多くの読者から愛されています。

その他にも、吉村敬子氏、桂文我氏、関屋敏隆氏、中川正文氏、竹内智恵子氏、吉橋通夫氏、今江祥智氏、さねとうあきら氏など、様々な作家との共作も多数手がけています。それぞれの作家とのコラボレーションによって生み出される作品は、多様な表現方法と世界観を見せてくれます。

代表的な作品には、童心社から出版された『じごくのそうべえ』シリーズ、『あつおのぼうけん』、『てっぽうをもったキジムナー』、『とくべえとおへそ』、すばる書房（後にくもん出版）から出版された『中岡はどこぜよ』、偕成社から出版された『はじめてふったゆき』、『こたろう』、くもん出版から出版された『みみずのかんたろう』、『からすじぞう』、『ふしぎなともだち』、福音館書店から出版された『てんにのぼったなまず』、そしてあかね書房から出版された『しばてんおりょう』などがあります。

現在も続く創作活動

現在、日本版画家協会会員として活動し、兵庫県淡路市に在住しています。数々の受賞歴と豊富な作品群からもわかるように、田島征彦氏は、日本の絵本界に多大なる貢献をした重要な作家の一人です。その独特な感性と技術、そして型染めという手法で表現された世界は、これからも多くの読者を魅了し続けるでしょう。

もう一度検索