田島直人

田島直人：日本陸上界を代表する金メダリスト

田島直人（たじま なおと）は、日本の陸上競技選手であり、1936年のベルリンオリンピックでの三段跳で金メダルを獲得したことで名を馳せました。1912年8月15日に大阪府で生まれましたが、幼少期に家族と共に山口県に転居しました。彼のスポーツキャリアは、兄・田島元の影響を受けて始まりました。兄は既に三段跳の日本チャンピオンで、彼とともに練習することで田島もその道に進むことになりました。

田島は、山口高校を経て京大（京都帝国大学）経済学部を卒業しました。学生時代から優れた才能を示し、1932年にはロサンゼルスオリンピックに出場し、走幅跳で6位に入賞しました。ここでの経験が、彼のその後の競技人生に大きな影響を与えることとなります。

1936年に再びオリンピックの舞台に臨んだ田島は、ベルリンでの三段跳で世界新記録となる16m00を記録し、見事に金メダルを獲得しました。この成果は、日本における陸上競技の地位を高めるものでした。また、同大会では走幅跳でも銅メダルを取得し、彼自身は「走幅跳が専門で三段跳は余技」と語っていたことから、若干の驚きがあったとも言われています。

田島は、ベルリンオリンピックの後、同じくオリンピックで選ばれた陸上選手、土倉麻と結婚し、その結婚自体が初のオリンピック選手同士のものであることからも話題となりました。その後、競技を引退した田島はサラリーマンとして働きながら、日本陸上競技連盟や日本オリンピック委員会で重要な役割を果たしました。特に、1956年のメルボルンオリンピックや1964年の東京オリンピックでは日本陸上チームのコーチを務め、次世代の育成に尽力しました。

田島の経歴は、陸上競技界における重要な一環として評価されています。彼は、優れた学業成績を収め、ドイツ語を流暢に操ることから、中京大学でドイツ語の教授としての役割も持ちました。また、1958年から1961年にかけて、三井鉱山の代表として西ドイツに赴任し、現地新聞で大きく報道されるほどの注目を集めました。

田島は1990年に岩国市の名誉市民となりましたが、同年12月4日に78歳で亡くなりました。彼の功績は評価され、2004年から山口陸上競技協会などが主催する「田島直人記念陸上競技大会」が開催されており、後世にその名前が受け継がれています。

また、田島がベルリン五輪で受け取った金メダリスト特有の「オリンピック・オーク」と呼ばれる苗木は、彼が持ち帰り、京都大学農学部に寄贈されました。この木は20m近い大樹に成長し、多くの人々に親しまれてきましたが、害虫の影響で2008年に伐採され、その種子から育てられた苗木は日本各地に植樹されています。

田島直人は、競技者としてだけでなく、教育者や指導者としても多くの人々に影響を与えてきた偉大な人物でした。彼の努力と成果は、日本の陸上競技界を支える礎となり、多くの後進へと受け継がれています。

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