田川 (利根川水系)

田川：栃木県を流れる一級河川

田川は、栃木県を流れる全長78kmの一級河川です。日光市を源流とし、宇都宮市、下野市を経て小山市で鬼怒川に合流します。古くから農業用水として利用されてきた一方、「暴れ川」として知られ、度重なる氾濫の歴史を持つ河川でもあります。この記事では、田川の地理、歴史、治水事業、過去の洪水被害、そして流域自治体について詳しく解説します。

1. 田川の地理

田川の源流は日光市七里の低山地帯です。日光市、宇都宮市街地、上三川町、下野市、小山市と流れ、小山市で田川放水路を経て鬼怒川に合流します。旧水路は小山市から茨城県結城市に至るまで続いていますが、現在では放水路が整備されたことにより、実質的な合流地点は小山市となっています。流域面積は245.8km²で、鬼怒川支流の中で最大規模を誇ります。

上流部は低山地で、のどかな田園風景が広がり、果樹園や雑木林が見られます。中下流域は宇都宮市街地や水田が広がる平野部となっています。主な支流には、赤堀川、山田川など11の一級河川があります。

2. 田川の歴史

古来より田川は「暴れ川」として知られており、多雨期には度々氾濫を繰り返してきました。氾濫によって流路は何度も変化し、氾濫域には肥沃な土壌が堆積しました。一方、上中流域では河川の浸食作用によって河岸段丘が発達し、谷底平野が形成されました。

江戸時代に入ると、宇都宮藩や幕府によって田川の水が近隣地域に導水され、灌漑用水として利用されるようになりました。特に、二宮尊徳が宇都宮北西部に建設した宝木用水（新川）や、下流部の下野市、小山市、結城市にまたがる吉田用水は著名な用水路です。これらの用水路は、周辺地域の農業発展に大きく貢献しました。

3. 田川の治水

田川の氾濫を防ぐための治水事業は古くから行われてきました。伝統的な手法としては、霞堤の設置による堤防決壊の防止対策が挙げられます。近年では、台風などによる大雨への対策として、鬼怒川合流部までの区間の台風対策計画が完成しています。今後は、逆川上流部や支流である武名瀬川、御用川の河道改修工事などが計画されています。

しかし、宇都宮市街地の拡大などによる流域の都市化の進展に伴い、降雨時の河川流入水量が増大する傾向にあります。そのため、今後、下流部における浸水被害の拡大を防ぐための対策が課題となっています。

4. 過去の洪水被害

田川流域では過去にも幾度となく大規模な洪水が発生しています。特に、カスリーン台風（1947年）、台風10号（1986年）、台風7号（1997年）、集中豪雨（1998年）、令和元年東日本台風（2019年）などの際には甚大な被害が発生しました。これらの台風や集中豪雨による洪水は、多くの犠牲者や浸水被害、農作物被害をもたらしました。特に2019年の台風19号では、宇都宮駅西側で大幅な氾濫が発生するなど、甚大な被害が発生しています。

5. 流域の自治体と支流

田川の流域には、日光市、宇都宮市、上三川町、下野市、小山市（栃木県）と結城市（茨城県、旧水路のみ）が含まれます。また、主な支流として逆川（日光市、宇都宮市）、赤堀川、一侍川、御用川、釜川、武名瀬川、山田川などが挙げられます。

6. まとめ

田川は、豊かな自然と歴史、そして治水事業の歴史が複雑に絡み合った河川です。農業用水としての役割と、度重なる氾濫による被害との両面を理解することで、この河川に対するより深い理解が得られるでしょう。今後の治水対策や流域の開発においては、過去の教訓を踏まえ、自然環境との調和を重視した取り組みが求められます。

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