田川建三

田川建三の略歴と業績

田川建三（たがわけんぞう）は、1935年に東京で誕生した日本の新約聖書学者であり、著述家としての活動でも著名です。大阪女子大学の名誉教授として、彼は宗教批判を通じた現代社会への批評を試み、多くの影響を与えました。自ら「神を信じないクリスチャン」と称しており、その立場から独自の見解を示します。

学歴と経歴

田川は聖学院高校を出た後、東京大学の宗教学宗教史学科に進学し、1958年に卒業。その後、同大学院の西洋古典学科で学び、ストラスブール大学に留学しました。そこでエチエンヌ・トロクメ教授の指導を受け、1965年に宗教学博士の学位を取得します。

彼は国際基督教大学の助手としてキャリアをスタートし、1970年には講師に昇格しました。しかし同年、チャペルでの説教により「造反教官」として大学を追放されることになります。この後、彼はゲッティンゲン大学やザイール国立大学での講義を経て、ストラスブール大学の客員教授となった後、ついに大阪女子大学教授として教壇に立ちました。1999年に大阪女子大学を退任して以降は、執筆活動に専念し、私塾を運営することで教育にも携わっています。

受賞歴

2017年には第71回毎日出版文化賞を受賞するなど、その業績が広く認められています。特に彼が手がけた『新約聖書：訳と註』は評価されています。

研究内容と業績

田川は新約聖書学の分野で、文献批判に基づくアプローチを取っています。彼の研究はキリスト教や宗教に対する批判的視点を持ち、現代社会の問題を考察することに重点を置いています。代表的な著作には、『新約聖書　訳と註』全7巻、『書物としての新約聖書』、さらに『イエスという男：逆説的反抗者の生と死』などがあります。また、吉本隆明の思想を批判的に論じた『思想の危険について』も知られています。

2018年には、新約聖書概論や『マルコ福音書注解』などの著作を執筆する予定でした。田川は新約聖書全体の翻訳と註解が存在しない限り、厳密な研究が成り立たないと考えており、そのための基盤を築くことを目指してきました。

思想とアプローチ

田川の思想は特異であり、特にルドルフ・ブルトマンのアプローチを高く評価しています。彼の見解によれば、神を信じることは偶像崇拝に近く、実際には「神は人間の創作物」であるとの立場を取っています。このように、「神を信じないクリスチャン」という新たな枠組みを述べることで、彼は真のクリスチャン像を再構築しようとしています。彼は聖書の解釈において、教会の伝統から解放された独自の視点が必要であると力説しています。

著作と翻訳

田川建三は多くの著作と翻訳を手がけています。翻訳書には『時の中心 ルカ神学の研究』や『新約聖書神学概論』、著書には『原始キリスト教史の一断面』や『宗教とは何か』があります。これらの作品は、彼の独特な視点と深い知識を反映しており、多くの読者に影響を与えています。

彼は新約聖書研究において、ただの学問の枠を超えた社会的、宗教的な議論を展開し続けています。

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