田本研造

田本研造の生涯と功績

田本研造（たもと けんぞう、1832年 - 1912年）は、三重県熊野市神川町から出た日本の著名な写真家であり、別名音無榕山（おとなしようざん）として知られています。彼は、紀州牟婁郡神川村に生まれ、音無川にちなむ名を名乗るようになりました。

医学の道から写真の世界へ

田本は、23歳の時に医学を志して長崎へと向かいました。そこで、蘭方医の吉雄圭斎に学びながら西洋科学に触れました。しかし、箱館（函館）に移った際に、右足が凍傷になり、最終的には切断を余儀なくされました。この不幸な出来事が、彼を写真の道へ導くきっかけとなりました。彼は、ロシア医師ゼレンスキーからも教えを受け、1866年頃から本格的に写真師として活動を始めるようになります。

重要な写真記録の数々

その後、松前（箱館）に向かい、松前城や藩士たちの写真を撮影しました。松前城は明治時代に大部分が取り壊されてしまったため、彼が残したこれらの写真は貴重な文化財となっています。また、1868年には箱館戦争において旧幕府軍の名将、榎本武揚や土方歳三の写真を撮影しました。土方歳三の洋装姿の写真は特に有名で、さまざまなメディアに取り上げられるほどです。

北海道の開拓と写真

1871年、明治政府より開拓使の指示を受けて札幌やその周辺の撮影を行い、写真を通じて北海道開拓事業の進捗状況を政府に伝えました。彼は弟子の井田幸吉を伴って出張し、翌年には158枚の写真を東京に送付。これらは政府の進捗報告や展示にも使用されました。1873年にはウィーン万国博覧会で開拓の写真が出品され、彼の功績は国際的にも評価されました。

写真館の設立と影響

田本は函館で光を取り入れるためのガラス窓を備えた本格的な写真館を設立し、これが北海道で最初の写真館として繁盛しました。彼のもとからは多くの有名な写真師が育ち、田本は函館だけでなく北海道全体の写真師たちの指導者として大いに貢献しました。

晩年と評価

1912年に田本は81歳で函館にて生涯を閉じました。彼が残した北海道の開拓時代の写真は、現在でも日本の写真史において高く評価されています。彼は一度も故郷には帰らなかったものの、近況を写真で報告し続けていたようです。神川町には彼が撮影した写真が残されており、いくつかは発見されて話題になりました。1981年には、地元熊野市に顕彰碑が建てられ、田本研造を冠した写真コンテストも開催されています。彼の影響は今なお多くの人々に受け継がれ、評価されています。

文献とさらなる情報

田本研造に関する詳細な情報は、岩波書店より出版された『田本研造と明治の写真家たち』などで確認できます。また、三重県の歴史に関するウェブサイトなどでも彼の功績についての資料が提供されています。

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