牟婁郡

牟婁郡の概要

牟婁郡（むろぐん）は、紀伊国に属し、和歌山県と三重県にかつて存在した広大な地域です。この郡は、紀伊国の南端に位置し、古くから特異な歴史的背景を持っています。

郡域の特徴

現在の地域に占める牟婁郡の範囲は、以下のようになっています。

• - 和歌山県

- 西牟婁郡、東牟婁郡の全域
- 新宮市、田辺市の大部分（龍神村の各町を除く）

• - 三重県

- 北牟婁郡、南牟婁郡の全域
- 尾鷲市、熊野市の全域
- 度会郡大紀町の一部（錦）
このように、牟婁郡は紀伊国および南海道で最大の面積を持つ郡であり、古代から人々の生活と文化が根付いていました。

古代の牟婁郡

牟婁郡の名前は、645年から654年の孝徳天皇の時代に初めて文献に現れ、当初は紀伊国造により管理されていました。この時期、古代の牟婁郡の域は現在の田辺市と一致していたため、地域の重要性が伺えます。紀伊国造は熊野国造を編入して新たな紀伊国を形成し、その結果、古代の牟婁郡は北牟婁郡や尾鷲市を含まない状態となりました。

ここで注目すべきは、牟婁という名称の由来です。古代には「室」、すなわち「周囲を囲まれた場所」という意味がありました。田辺湾の特徴的な地形が、この地名に強く影響を与えたことが考えられます。

牟婁郡には、平安時代の和名類聚抄にが記載されており、そこには神戸郷や岡田郷などの郷名が見られます。また、「熊」という字の由来は「隈」で、辺境の地を示すものであり、国家中心から遠くに位置することを暗示しています。

中世から近世の変遷

中世になると、三重県北牟婁郡や尾鷲市、度会郡大紀町の錦地区は元々志摩国英虞郡の一部でしたが、1582年には新宮城主により紀伊国牟婁郡に編入されました。また、近世には、幕末に成立した明治時代に入り、牟婁郡は行政区画として再編成されました。

明治4年には、廃藩置県の影響で、郡が和歌山県、新宮県、田辺県の管理下に置かれ、一連の府県統合の過程で、近代的な行政区画へと組織されました。特に1879年に郡区町村編制法が施行された際に、牟婁郡は西牟婁郡や東牟婁郡、南牟婁郡、北牟婁郡として分割され、最終的には消滅しました。

呼称の由来と影響

照らすことができるのは、「ムロ」という名称の由来についてです。鎌田純一の解釈によれば、「ムロ」とは神が宿る場所を指すとされています。地名は、和名類聚抄においても、古代の朝鮮半島に存在していた地域とも結びついていることが示唆されています。これにより、牟婁郡の名前は地理的だけでなく、文化的にも深い歴史を持つことが分かります。

まとめ

牟婁郡は、古代から近代まですべての時代を通じて豊かな歴史を持つ地域です。その地理的特性や歴史の変遷は、今なお魅力的な研究対象となっています。この地域の深い歴史と文化は、後世に受け継がれるべきものです。

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