田村一二

田村 一二の生涯と功績

田村 一二（たむら いちじ、生年1909年 - 没年1995年11月8日）は、日本における知的障害者教育の先駆者として知られる教育者です。滋賀県を中心に、知的障害児のための教育機関や共生社会の構築に尽力し、その活動は多大な影響を与えました。

田村は、京都府加佐郡余部町に生まれました。彼の大学生活は困難なものでした。十代の頃に家業が失敗し、生計を立てるために夜店で菓子を売っていたものの、教育に対する情熱を失わず、恩師に促されて教員養成所へ入学しました。代用教員として働きながら、教員の資格を取得し、1930年には正教員としてのキャリアをスタートします。

彼が最初に知的障害児の特別学級に担任として就いたのは、当時では不得手と考えられていた特別支援教育でしたが、彼はその場で子どもたちの純真さに心を打たれ、障害児教育に長く関わることを決意しました。1929年には絵画の学びを続け、また独立美術研究所でも油絵を学びました。

その後、田村は学校の枠に留まらず、より良い教育環境を求めて1941年に知的障害児が生活しながら学べる施設「紫野学園」の設立を構想します。しかし、このプロジェクトは戦争の影響で実現しませんでした。1943年には、滋賀県の糸賀一雄からの招きで大津市に移住し、障害者のための施設「石山学園」を創設するために尽力しました。

1946年、田村は糸賀と池田太郎と共に、知的障害児教育を行う「近江学園」を立ち上げ、1952年には副園長に就任します。1954年には胃潰瘍の療養のため、天理教の修養科に通うことで信仰にも励みます。さらに1961年には一麦寮を設立し、寮長として多くの障害者の更生に寄与しました。

田村は、1973年には朝日社会奉仕賞、1975年には京都新聞社会福祉功労賞、1985年には毎日新聞社会事業団社会福祉顕彰、1993年には石井十次記念賞を受賞し、その教育活動が高く評価されました。彼の教育哲学は自身の著作としても多数残されており、『忘れられた子等』『手をつなぐ子等』『茗荷村見聞記』などは映像作品としても語り継がれています。

1982年には、障害者と健常者が共生する「茗荷村」を設立し、これにより彼の理念は具体化されます。彼の活動は、障害者への理解を深め、共生社会の重要性を広めることに寄与しました。

著名な著作

• - 『鋏は切れる』（1941年）
• - 『忘れられた子等』（1942年）
• - 『手をつなぐ子等』（1944年）
• - 『茗荷村見聞記』（1971年）

田村一二の教育に対する情熱と献身は、今なお多くの人々に受け継がれ、その影響は彼が設立した施設や著作を通じて広がり続けています。彼の生涯は、教育、障害者福祉、共生社会についての重要な指針を示すものとなっています。

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