田村久三

田村久三：機雷戦のスペシャリスト、その生涯

田村久三（たむら きゅうぞう）は、1897年10月1日に栃木県で生まれ、1972年3月23日に生涯を閉じました。彼は、日本海軍の軍人として、また戦後は海上保安官、警備官として活躍し、特に機雷の専門家としてその名を知られています。

海軍軍人としての経歴

栃木県出身の田村は、旧制栃木県立栃木中学校を卒業後、1918年に海軍兵学校（46期）を卒業し、海軍の道を歩み始めました。海軍大佐として終戦を迎えるまで、様々な役職を歴任し、特に機雷に関する専門知識と技術を磨きました。海軍大学校選科学生時代には、東京大学理学部で機雷兵器を専攻するなど、その専門性を高める努力を怠りませんでした。

戦後の掃海作業への貢献

終戦後、田村は第二復員省、海上保安庁、そして警備隊（後の海上自衛隊）において、掃海作業の責任者として重要な役割を果たしました。戦時中に日本近海に敷設された機雷の撤去は、戦後の復興において喫緊の課題であり、田村はその陣頭指揮を執りました。

連合国軍の占領下において、田村は元海軍大佐として、機雷関係のスタッフをまとめ、アメリカ海軍司令部との折衝を重ねました。掃海艇の整備や人員の確保に尽力し、全国各地から集められた約360隻の掃海艇と約1,900名の人員で新たな掃海部隊を編成しました。そして、アメリカ海軍から提供された機雷敷設資料をもとに、占領軍の指揮下で、計画的な掃海作業を再開させました。

朝鮮戦争における掃海作戦

朝鮮戦争が勃発すると、北朝鮮軍は機雷戦を開始し、アメリカ海軍は機雷対処を迫られました。しかし、国連軍の掃海部隊は十分な戦力を有していなかったため、国連軍は日本に対し、海上保安庁の掃海部隊の派遣を要請しました。この時、田村は朝鮮海域掃海部隊の総指揮官に任命され、その卓越した指導力で掃海作戦を成功に導きました。この掃海隊は「特別掃海隊」と呼ばれ、国旗ではなく万国信号旗Eを掲げて任務に当たりました。

その他の経歴

田村は、海軍軍人としてだけでなく、技術者としても優れていました。イタリアへの出張や横須賀海軍工廠での勤務を通じて、機雷兵器に関する深い知識と経験を蓄積しました。また、海軍艦政本部では、機雷に関する様々な部門の責任者を務めました。

年譜

1915年：栃木県立栃木中学校卒業
1918年11月：海軍兵学校卒業、海軍少尉候補生
1919年8月：海軍少尉任官
1921年12月：海軍中尉に進級
1924年12月：海軍大尉に進級、駆逐艦「萩」乗組
1930年12月：海軍少佐に進級
1935年11月：海軍中佐に進級
1940年11月：海軍大佐に進級
1945年10月：海軍省軍務局掃海部長
1948年1月：海上保安庁掃海課長
1950年6月：海上保安庁航路啓開本部長、特別掃海隊総指揮官
1953年10月：警備監に任命、退官
1969年11月：勲二等瑞宝章受章

栄典

1919年9月10日：正八位
* 1969年11月3日：勲二等瑞宝章

田村久三は、日本の機雷戦の歴史において、その名を刻むべき人物です。海軍軍人として、また掃海作業の責任者として、その知識と経験、指導力を発揮し、戦後の日本の復興と平和に大きく貢献しました。

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