田沼意尊

田沼意尊（たぬま おきたか）

田沼意尊は、江戸時代後期から明治時代初期にかけて生きた大名であり、後に華族となった人物です。祖父は老中として権勢を振るった田沼意次。意尊は遠江国相良藩の藩主を務めたのち、上総国小久保藩の初代藩主となり、さらに同藩の初代知藩事となりました。幕末の動乱期には江戸幕府の若年寄という重職を担っています。官位は従五位下、玄蕃頭を拝命していました。

略歴

父、田沼意留の子としてこの世に生を受けました。天保11年（1840年）7月20日、数え年22歳で家督を相続し、藩主の座に就きます。藩主となった後、大坂定番という役職を務めました。文久元年（1861年）9月14日、数え年43歳で幕府の要職である若年寄に抜擢されます。

若年寄在任中の元治元年（1864年）、水戸藩で起こった尊王攘夷派浪士による天狗党の乱の鎮圧に幕府軍総督として尽力しました。天狗党が撤退した後には筑波山を占領しましたが、戦闘では部田野の戦いにおいて敗北を喫しています。この乱の鎮圧にあたり、軍資金の調達に奔走した家老の井上寛司が、多額の借金を返済できず責任を取って切腹するという悲劇に見舞われた出来事も残されています。翌元治2年（1865年）には、越前国敦賀で幕府に降伏した天狗党の中心的人物である武田耕雲斎らを処刑する役割を担いました。しかし、慶応2年（1866年）10月4日、若年寄の職を解かれることとなります。

慶応4年（1868年）に勃発した鳥羽・伏見の戦いには、旧幕府軍の一員として参戦しました。この戦いの直後の同年2月には、駿遠地方の藩としては最も遅れて新政府への恭順を示す勤王証書を提出しました。明治元年（1868年）9月21日には、所領を上総国小久保に移されます。明治2年（1869年）6月24日、版籍奉還を受けて小久保藩知藩事となりました。知藩事としては、洋学を取り入れた近代的な藩校の創設に力を注ぐなど、藩政の近代化に意欲を見せました。

同年12月24日、数え年51歳でその生涯を閉じました。

系譜

田沼意尊の系譜については、父は田沼意留です。正室は久留島通嘉の娘を迎えました。子女として、長女の智恵は田沼忠千代、後に田沼望の夫人となり、次女の路は小笠原長育の夫人となりました。養子には、伊達宗城の六男である田沼忠千代、大岡忠恕の五男である田沼意斉、そして伏原宣諭の二男である田沼望がいます。

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