田秀英

田秀英（でん しゅうえい）は、明朝末期の皇帝、崇禎帝の寵妃として知られています。彼女の生涯は、明朝の興亡と深く結びついており、その華やかさと悲劇性は多くの人々の関心を引きます。

生い立ちと入内

田秀英は、揚州出身とされています。一説には、陝西商人の田弘遇を養父とし、実父は不明とも伝えられています。母は娼婦出身の呉氏です。彼女は幼少期から美しく、才能豊かだったとされ、天啓年間に信王朱由検（後の崇禎帝）の邸に入り、側室となりました。当時、信王はまだ皇帝ではなく、一地方の王に過ぎませんでしたが、田秀英の美貌と才能は、彼の心を捉えたと考えられます。

寵妃としての活躍

信王が崇禎帝として即位すると、田秀英は礼妃に封じられ、その後、貴妃に進みました。彼女は承乾宮を住まいとし、その美しさと多芸多才さから、皇帝の寵愛を一身に受けました。特に彼女の纏足の美しさは、皇帝を魅了したと言われています。また、歌舞音曲にも長けており、皇帝を楽しませたと考えられます。しかし、その寵愛ぶりは、正室である周皇后との間にしばしば諍いを引き起こしました。一度は、その不仲から幽閉されたこともありますが、3ヶ月後には復位しています。彼女の存在は、宮廷内で大きな影響力を持っていたことがうかがえます。

皇貴妃への昇進と死

崇禎14年（1641年）には、田秀英は皇貴妃へと昇進しました。これは、皇帝からの絶大な信頼と寵愛を示していると言えるでしょう。しかし、彼女の栄華は長くは続きませんでした。翌年の崇禎15年10月16日（1642年11月8日）、彼女は亡くなります。死後、恭淑端恵静懐皇貴妃と諡され、天寿山に葬られました。彼女の死は、皇帝に大きな悲しみを与えたと伝えられています。

明朝の滅亡と田秀英の墓

崇禎17年（1644年）、李自成率いる農民反乱軍が北京を陥落させ、明朝は滅亡します。崇禎帝は、周皇后を自害させた後、自身も首を吊って自害しました。李自成の命により、田秀英の墓は開かれ、崇禎帝と周皇后の遺骸が合葬されました。これが現在、思陵（明の十三陵の一つ）として残る、崇禎帝の陵墓となっています。田秀英の墓が、皮肉にも皇帝の陵墓の一部となったことは、歴史の皮肉と言えるでしょう。

子女

田秀英は、崇禎帝との間に以下の3人の子供をもうけました。

永悼王 朱慈炤
朱慈煥（悼霊王）
* 朱慈燦 − 夭折。悼懐王の位が贈られた。

これらの子供たちもまた、明朝の滅亡と共に、悲劇的な運命を辿ることになります。

史料

田秀英に関する史料として、『明史』、『崇禎長編』、『思陵典礼記』、『北游録』などが挙げられます。これらの史料から、彼女の生涯や明朝末期の宮廷の様子を垣間見ることができます。

田秀英は、明朝末期という激動の時代を生きた女性でした。その美貌と才能で皇帝を魅了し、栄華を極める一方で、王朝の滅亡という歴史の波に翻弄され、悲劇的な結末を迎えました。彼女の生涯は、明朝の興亡を象徴する出来事として、後世に語り継がれています。

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