田辺新田

田辺新田（たなべしんでん）

神奈川県川崎市川崎区に位置する町名です。昭和39年（1964年）11月1日に住居表示が実施されました。2010年の国勢調査によれば、その面積は約28.86ヘクタールです。この町は、川崎区内の行政地名としては唯一「新田」という名称を持つという特徴があります。

地理

田辺新田は、川崎区の南西端に位置しています。町域の大部分は広大な富士電機の工場敷地が占めています。この町の境界は、北端を神奈川県道6号東京大師横浜線（通称：産業道路）と首都高速神奈川1号横羽線が、南端をJR鶴見線が通ることで特徴づけられます。隣接する地域としては、北側で産業道路を挟んで川崎区浅田と接し、東側では同じく川崎区の鋼管通や南渡田町と隣り合っています。南側は鶴見線を境界として川崎区白石町に面し、西側では横浜市鶴見区の寛政町と隣接しています。

歴史

田辺新田の開拓がいつ始まったのか、正確な年代は明らかになっていません。しかし、『新編武蔵風土記稿』に地名が見えない一方で、天保期の『磯付村概要図』には記載があることから、天保年間頃に開発された地域であると考えられています。江戸時代には天領であり、『旧高旧領取調帳』には53石の石高が記録されています。ただ、嘉永6年（1853年）の村数等取調書には「家なし」と記されており、開拓初期には定住者が少なかった時期があったことがうかがえます。

大正時代に入ると、現在の町域の主要部分を占めることとなる富士電機の工場が進出して操業を開始し、地域の産業構造が大きく変化しました。さらに、海側の土地では埋め立てが進み、町域が拡大していきました。

地名の由来

この地域が開拓された際、小田村（現在の川崎区の一部）の田辺家によって開発が行われたことに由来して、「田辺新田」と名付けられたとされています。

沿革

天保年間: 『磯付村概要図』に田辺新田の名が確認される。
弘化2年（1845年）: 開拓に関わった田辺佐五右衛門により、地域の稲荷社が創建される。
明治元年（1868年）: 明治維新を経て、当地が神奈川県に所属することとなる。
明治7年（1874年）: 大区小区制の施行に伴い、第4大区第4小区に編入される。
明治22年（1889年）: 町村制が施行され、周辺の村々と合併して田島村が成立。田辺新田はその大字となる。
大正12年（1923年）: 田島村が町制を施行し、田島町となる。田辺新田は田島町の大字として引き継がれる。
大正13年（1924年）: 富士電機の工場が当地で操業を開始する。
昭和2年（1927年）: 田島町が川崎市に編入され、「川崎市田辺新田」となる。
昭和3年（1928年）: 海側の埋立地が「竹ノ下町」として新たな町名を付与される。
昭和39年（1964年）: 住居表示が実施される。これに伴い、町域の一部が小田七丁目に分離される。また、従前の田辺新田の残存区域に、竹ノ下町および白石町の各一部を加えて、現在の町丁としての「田辺新田」が設置された。
* 昭和47年（1972年）: 川崎市が政令指定都市に移行したことにより、川崎市川崎区田辺新田となる。

交通

町域の南端にはJR鶴見線が通っており、近隣には武蔵白石駅が所在します。路線バスについては、川崎鶴見臨港バス（浜川崎営業所の管轄）により、当地と川崎駅を結ぶ路線が運行されており、通勤や移動の便が確保されています。道路網としては、町の北端に神奈川県道6号東京大師横浜線（産業道路）が通り、その上には首都高速神奈川1号横羽線が並行して走っています。首都高速の浜川崎出入口や浅田出入口も近くに位置しており、広域へのアクセスも比較的容易です。

主要施設

町域の大部分を占める主要な施設として、富士電機株式会社の川崎工場があります。この工場は同社の登記上本店所在地でもあります。その他、日通商事株式会社の東京LSセンターなどの事業所も立地しています。

その他

郵便については、郵便番号は210-0856が使用されており、集配業務は川崎港郵便局が行っています。

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