甲子園 (地名)

甲子園：野球の聖地、歴史と文化が息づく街

甲子園は、兵庫県西宮市南東部に位置する地域であり、特に阪神甲子園球場の存在によって、日本全国にその名を知られています。「甲子園」という地名は、現在では広範囲に分布しており、JR神戸線の辺りから国道2号、阪神電気鉄道本線を越えて海岸線まで広がっています。

甲子園の概要

「甲子園」という言葉を聞いて、まず思い浮かぶのは野球場、阪神甲子園球場でしょう。しかし、甲子園の魅力はそれだけではありません。武庫川女子大学の甲子園会館（旧甲子園ホテル）をはじめとする、大正から昭和にかけての近代建築が数多く残されており、歴史的な価値も有しています。また、西宮七園の一つとして知られる高級住宅街としても発展し、その名は全国に広がり、周辺地域にも「甲子園」を冠する地名が増えていきました。

地理的特徴

1951年に西宮市に編入されるまで、甲子園は武庫郡鳴尾村の一部でした。かつては武庫川の支流である枝川・申川が流れ、それが村の境界線となっていました。現在、国道2号の上甲子園交差点から阪神甲子園駅へと続く道は、緩やかなカーブを描いていますが、これは旧枝川の水路跡をそのまま利用したものです。この道路沿いには、かつての河川敷に住宅地が造成されています。また、旧申川の水路跡にも道路が整備されており、阪神甲子園球場の西側から兵庫県立西宮今津高校へと続いています。

開発の歴史

甲子園の開発は、阪神国道（現在の国道2号）の整備と、武庫川の氾濫を防ぐための改良工事がきっかけでした。工事資金を捻出するため、枝川・申川を廃川とし、その河川敷を阪神電気鉄道に売却。阪神電気鉄道は、この広大な土地に住宅地と行楽地を開発しました。

住宅地開発

阪神電気鉄道は、購入した河川敷に住宅地と行楽地を開発しました。住宅地経営にあたっては、都市計画や造園に明るい大屋霊城に意見を求め、遊園地と住宅地を区分し、海浜には動物園、遊戯場、海水浴場を配置する構想が提案されました。1928年から住宅地の分譲が開始され、1930年代にはリゾート住宅地「浜甲子園健康住宅地」が開発されました。また、旧枝川の廃川敷に沿って、中甲子園、上甲子園、七番町、浜甲子園と住宅地が順次開発され、一番町から九番町までの住宅地が造成されました。さらに、廃川敷以外でも浜甲子園健康住宅地、南甲子園が開発されました。

スポーツ・レジャー施設の開発

1924年には、現在の阪神甲子園球場となる大運動場が開設されました。その年の干支が甲子であったことから、この一帯が「甲子園」と名付けられました。また、1925年には甲子園海水浴場が開設され、1928年には甲子園浜プール、1932年には甲子園室内プールが開設されました。

甲子園開発の遊園施設として、旧枝川河口付近に初代阪神パークが開設。潮湯、運動施設、映画場などを備えた「甲子園娯楽場」としてスタートし、その後、動物園や遊戯設備を増強して「阪神パーク」と改称しました。当時としては珍しいペンギンや動物サーカスが人気を集め、1935年には「世界一ノ大水槽」と謳われた阪神水族館も開設されました。また1929年には甲子園南運動場が開設されました。

1930年には、フランク・ロイド・ライト門下の遠藤新が設計した甲子園ホテルが開業。「東の帝国ホテル、西の甲子園ホテル」と称され、社交場として利用されました。1937年には、甲子園球場の西側に甲子園水上競技場（大プール）が開設され、全日本選手権大会などの競技会が開催されました。また、甲子園球場の西側にはテニスコートが設けられ、国際試合も開催されていました。

その他施設の開発

学校も誘致されており、甲陽学院高校がキャンパスを構えました。アクセス駅として、阪神電気鉄道は1924年に甲子園駅を設置。また、甲子園線が浜甲子園まで、中津浜まで敷設されました。1934年には、鉄道省東海道本線の新駅が甲子園口駅と命名されました。

戦後の甲子園地区

戦後、GHQにより甲子園球場やプールは接収されましたが、1947年に球場の接収が解除され、中等学校野球（現在の高校野球）が再開。プロ野球も甲子園で開催されるようになりました。阪神パークは1950年に甲子園八番町に移転し、遊園地と動物園として再開。しかし、1980年代から入園者が減少し、2003年に閉園。跡地には現在、大型商業施設「ららぽーと甲子園」が建っています。

住宅地としての甲子園は、現在も「西宮七園」と呼ばれた邸宅街の雰囲気を残しています。武庫川沿いの臨港線以北は風致地区に指定されており、環境保全地区宣言に基づく地区計画が定められています。

まとめ

甲子園は、野球の聖地としてだけでなく、歴史的な建築物や美しい街並みが残る魅力的な地域です。その開発の歴史や、戦後の変遷を知ることで、甲子園の新たな一面を発見できるでしょう。

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