甲府刑務所

甲府刑務所：山梨県唯一の刑務所の歴史と現状

甲府刑務所は、山梨県甲府市に位置する、法務省矯正局東京矯正管区所属の刑務所です。山梨県唯一の刑務所という特性を持ち、未決勾留者収容のための拘置区も備えています。収容分類級はB級で、主に26歳以上の、刑期8年未満の再犯者を対象とした短期処遇を目的としています。

歴史を彩る移転と変遷

甲府刑務所は、明治2年(1869年)に甲府市代官町に徒刑場として設置されたのが始まりです。その後、橘町、里垣村と移転を繰り返し、大正11年(1922年)に現在の名称である「甲府刑務所」となりました。昭和20年(1945年)の空襲で大きな被害を受けましたが、昭和26年(1951年)に復旧。そして昭和55年(1980年)には現在の甲府市堀之内町へと移転しました。現在の敷地は、かつて甲府市立琢美小学校が置かれていた場所で、小学校閉校後は甲府市立善誘館小学校が建てられています。昭和58年(1983年)には増築工事が完了し、現在の規模となりました。

受刑者の現状と処遇

甲府刑務所の収容定員は約600名(未決者100名を含む)です。被収容者の内訳は、覚せい剤などの薬物関連事犯や窃盗犯が全体の6割を占めており、累犯者が多いのが特徴です。また、外国人収容者も1割以上おり、暴力団関係者も収容されています。かつては過剰収容が問題となっていましたが、平成23年(2011年)以降は収容定員を下回り、平成27年(2015年)には収容率80％を下回るまで改善されました。

施設と設備、特色ある取り組み

甲府刑務所の敷地面積は約71,140㎡です。所内には、受刑者の更生を支援するための様々な設備が整えられています。近年では、刑務作業として画期的な取り組みが開始されました。平成28年(2016年)10月からは、所内のグラウンドに設置されたエアドーム内で、水耕栽培によるレタスの生産を行っています。直径20mの水槽で、最大1万5,000株のレタスを栽培する大規模なシステムです。これは、刑務作業における新しい試みとして注目を集めています。

また、社会復帰支援の一環として、アーク溶接の技術指導も行われています。伝統的な刑務作業としては、応接セットの製作があり、各地の即売会で好評を得ています。これらの取り組みは、受刑者のスキル向上と社会復帰への円滑な移行を支援する上で重要な役割を果たしています。

さらに、甲府刑務所は映画のロケ地としても使用されたことがあります。映画「休暇」では、刑務所の外周の塀が劇中の拘置所の塀として使われました。

組織と運営

甲府刑務所の組織は、所長を頂点に、総務部(庶務課、会計課、用度課)、処遇部(処遇担当、企画担当)、医務課の2部1課体制で運営されています。それぞれの部署が連携し、円滑な刑務所の運営と受刑者の処遇に努めています。

甲府刑務所は、歴史と伝統を継承しながら、現代社会のニーズに応じた更生支援に取り組んでいる、山梨県における重要な矯正施設です。

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