甲斐国分寺

甲斐国分寺

甲斐国分寺は、山梨県笛吹市に位置する臨済宗妙心寺派の寺院です。山号を護国山と称し、本尊には薬師如来を祀っています。この寺院は、奈良時代に聖武天皇の詔によって日本各地に建立された国分寺の一つ、甲斐国分寺の後継寺院にあたります。

この項目では、現在の寺院だけでなく、創建当時の史跡である甲斐国分寺跡と甲斐国分尼寺跡についても解説します。これらの史跡は、ともに国の史跡に指定されています。

概要

甲斐国分寺は、甲府盆地の東側、金川の右岸に広がる扇状地に位置しています。旧国分寺は、10世紀末から11世紀頃にかけて宅地化が進み、衰退したと考えられています。

甲斐国分寺と国分尼寺が位置する笛吹市一宮町国分・東原地域は、古代甲斐国における政治の中心地でした。古代甲斐の政治の中心は、甲府盆地の中央北寄りに位置する山梨郡・八代郡に成立し、現在の笛吹市春日居町から一宮町、御坂町にかけての一帯に広がっていました。この地域には、国衙や郡衙に関連する遺跡や、奈良・平安時代の遺跡、春日居町寺本にある寺本廃寺など、古代寺院の跡が点在しています。

山梨郡にあたる笛吹市春日居町は、甲斐国の前期国府の所在地であったと考えられています。一方、八代郡にあたる笛吹市御坂町には「国衙」という地名が残り、『和名類聚抄』には「国府は八代郡に在り」と記されていることから、後期国府は八代郡に移転したと考えられています。

古代甲斐国府の移転については諸説あり、上記の二転説の他に、一宮町国分・東原地域を中間に含める三転説も存在します。

寺伝によれば、建長7年（1255年）に諸堂宇が焼失し、14世紀頃に一時的に復興したものの衰退。その後、戦国時代に武田信玄によって再興されたとされています。

旧国分寺跡が国の史跡に指定されたため、その跡地上にあった当寺は、南西の史跡範囲外に移転し、堂宇も新しくなりました。

境内

現在の境内は、移転後に整備されたもので、本堂や薬師堂、鐘楼門などが配置されています。これらの建物は、歴史的な様式を尊重しつつ、現代的な要素も取り入れられています。

甲斐国分寺跡

現在の国分寺の北東、笛吹市一宮町国分に位置します。ここは、現在の国分寺が移転するまでの旧境内でした。

寺域は南北255メートル、東西220メートルあり、伽藍配置は大官大寺式でした。天慶元年（938年）の当寺に関する史料が存在し、10世紀前半には存続していたと考えられていますが、10世紀末から11世紀頃の住居跡が見つかっており、その頃には宅地化が進み荒廃していたと考えられています。

その後、境内跡上に現在の国分寺が再建されましたが、笛吹市によって史跡範囲が公有地となり、現在の国分寺は南西の史跡範囲外に移転しました。

甲斐国分尼寺跡

国分寺跡の北方、笛吹市一宮町東原に位置します。周辺からは、国分尼寺を示す「法寺」と書かれた土器が多数出土しています（法寺は法華寺（国分尼寺の別称）の略称）。

国分尼寺跡は、古くは寺本廃寺（笛吹市春日居町寺本）に比定され、この寺跡は陰陽師・安倍晴明の邸宅跡であるとされていました（『甲斐国志』など）。

寺域の推定地からは、10世紀末から11世紀頃の住居跡が確認されており、国分寺と同様に、その頃から次第に荒廃したと考えられています。

文化財

国の史跡

甲斐国分寺跡 - 1922年（大正11年）10月12日指定。
甲斐国分尼寺跡 - 1949年（昭和24年）7月13日指定、2001年（平成13年）1月29日・2018年（平成30年）2月13日に史跡範囲の追加指定。

笛吹市指定文化財

有形文化財
国分寺本堂・薬師堂・鐘楼門・庫裏附棟札・鰐口・小屋貫・板絵（建造物）

現地情報

所在地

国分寺（現）：山梨県笛吹市一宮町国分196-1
国分寺跡：山梨県笛吹市一宮町国分
(北緯35度38分17.44秒 東経138度41分00.83秒)
国分尼寺跡：山梨県笛吹市一宮町東原
(北緯35度38分35.54秒 東経138度41分01.73秒)

交通アクセス（現国分寺まで）

鉄道：東日本旅客鉄道（JR東日本）中央本線 石和温泉駅（5.9km） - タクシーで約16分。
高速バス：バスタ新宿から、中央高速バスで「一宮」バス停下車（徒歩約16分）
車：中央自動車道 一宮御坂ICから、約5分

周辺

浅間神社 - 甲斐国一宮。
甲斐奈神社 - 甲斐国総社論社。

脚注

参考文献

『日本歴史地名大系 山梨県の地名』（平凡社）東八代郡一宮町 甲斐国分寺跡項・甲斐国分尼寺跡項

外部リンク

護國山國分寺 - 公式サイト
* 甲斐国分寺跡、甲斐国分尼寺跡 - 国指定文化財等データベース（文化庁）

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