甲斐姫

甲斐姫の生涯と伝説

甲斐姫（かいひめ）は、戦国時代において特異な存在感を放った女性であり、豊臣秀吉の側室の一人である。元亀3年（1572年）に生まれ、忍城の城主・成田氏長の娘として知られている。

出自と成長

甲斐姫は成田氏長と、上野国金山城主由良成繁の娘との間に生まれた。彼女の母系にも優れた武家の血が流れており、外祖母が籠城戦を指揮した経歴も持っていた。成田氏と由良氏の関係悪化により、母と離別した後、彼女は継母の下で育てられ、特に継母との関係は良好であったと伝えられている。19歳の際にはその美しさに加え、武芸にも優れた才能を示し、「東国無双の美人」と評された。

忍城の戦い

天正18年6月、豊臣秀吉による小田原征伐の最中、甲斐姫は父・氏長が留守の忍城を守ることになった。城には彼女と多くの家臣が守備しており、豊臣軍が侵攻する中、優れた戦略で城を防衛する。城代の成田泰季が病に倒れた後、甲斐姫は泰季の遺言に従い、泰季の嫡男を総大将に据えて籠城を続けた。

豊臣軍は、水攻めの戦法を用いて城を攻め落とそうとしていたが、6月25日には浅野長政が援軍として到着した。その際、甲斐姫は自ら武装し、200余騎を引き連れて敵に立ち向かった。彼女は戦場で活躍し、仲間とともに多くの敵を打ち倒すという勇名を挙げた。

開城とその後

7月には、ついに豊臣軍が忍城に対して三方向から攻撃を開始し、忍城はついに開城する決断を下す。甲斐姫は、城を後にする際に武装して進み出て、彼女の勇敢な姿は伝説となった。しかし、その後の甲斐姫についての記録は曖昧であり、彼女は秀吉の側室となったとされ、その生活もまた不明瞭である。

甲斐姫の実在性と伝承

甲斐姫については、実在性を疑問視する声も少なくない。彼女の強い意志や武勇伝は、後世に編纂された多くの資料に記録されているが、具体的な証拠は乏しい。ただし、彼女の伝説が残る背景には、武士の家に生まれた女性としての特殊な地位があり、彼女は美しさと武勇の両方が兼ね備わった偉大な人物として語り継がれている。特に関八州古戦録や成田記などの資料において、彼女の存在が語られ、武将としての活躍が称賛され間接的に記録されている。

まとめ

甲斐姫は戦国時代の女性の中でも特に知られた存在であり、その勇敢さと美しさは、今でも多くの人々に語り継がれている。忍城の戦いでは、その胆力を見せつけ、豊臣家に仕えたことからも、彼女の生涯には多くの物語と伝承が含まれている。彼女の足跡を辿ることは、当時の女性の地位や戦の様相を理解する上で重要であり、今なお多くの研究や創作に影響を与えている。

もう一度検索