甲陽鎮撫隊

甲陽鎮撫隊について

甲陽鎮撫隊（こうようちんぶたい）は、1868年に新選組が旧幕府からの命令により編成された部隊です。この隊の設立背景や編成内容について詳しく見ていきましょう。

編成に至る背景

甲陽鎮撫隊の成立は、鳥羽・伏見の戦いでの敗北から始まります。この戦いに敗れた新選組の近藤勇は、徳川慶喜に対して甲府城の支配権を得るよう求めました。永倉新八はその時期を「江戸到着早々」と述べ、近藤の意図は「甲州城を自らの手に入れ、慶喜を招こうとした計画」にあると記しています。

また、当時陸軍総裁の勝海舟は、明治17年に出版された『解難録』において、近藤らが「再戦」を計画していたことを示唆しています。勝は甲州へ出兵する際、表向きは恭順の意を示しつつ、裏では新政府軍との戦闘を意図していた可能性があると考えられます。しかし、勝の行動には疑問の余地があり、石井孝はこれを「消極的な厄介払い」と見る一方で、近藤らがゲリラ戦を通じて対政府交渉を有利に進める意図があったと指摘しています。

甲陽鎮撫隊の編成

1868年2月28日、徳川家より新選組に「甲府鎮撫」の命令が正式に下されました。この際、大砲6門、元込小銃25丁、ミニエー銃200丁などの武器が支給されましたが、伝えられる数字には異なりが見られます。資料によれば、江戸出発時の隊視は「近藤勇隊長、土方歳三副長を含む凡百有余人で甲府城に向かう」とのみ記録されており、正確な人数は不明ですが、約70人の新選組隊士と会津藩士及び弾内記の配下から成る200人弱の混成部隊であったと推測されます。

永倉新八による証言では、銃隊の参加者数には諸説があります。子母澤寛はこの銃隊を200人とし、永倉は別の数字を挙げており、その間には齟齬も見られます。永倉はまた、江戸の穢多頭である弾左衛門が「平人」に昇格し、その後弾内記に改名した背景にも触れています。松本良順の尽力で弾内記の配下が新選組に加わったとする説には一定の信憑性があるものの、永倉の証言の全てが裏付けられているわけではありません。

隊名の由来と史料における言及

現在では「甲陽鎮撫隊」として広く認知されていますが、この名称が初めて使用されたのは明治32年の資料です。子母澤寛が著した『新選組始末記』で引用され、それ以降の文献に影響を与えました。しかし、他の資料では「鎮撫隊」と称されることが多く、実際には「甲陽」を冠する呼称がどう創られたのかは不明です。甲州に由来する『甲陽軍鑑』との関連があるかもしれません。

以上が甲陽鎮撫隊の設立背景とその編成状況です。新選組の活動の一部として、幕末の動乱期にどのように展開されていったのか、今後の研究によってさらに解明されることが期待されます。

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