申包胥

申包胥：春秋時代の忠臣、その生涯と功績

申包胥は、春秋時代の楚の国に仕えた政治家で、その忠誠心と知略で知られています。羋氏という氏族に属し、公孫包胥、あるいは単に包胥とも呼ばれていました。平王、昭王、恵王の三代にわたり仕え、激動の時代を生き抜いた人物です。特に有名なのは、かつての親友であった伍子胥との複雑な関係と、楚を滅亡の危機から救った功績です。

伍子胥との友情と決別

申包胥と伍子胥はかつて親しい友人でした。しかし、平王7年（紀元前522年）、伍子胥の父と兄が平王によって処刑されたことをきっかけに、二人の関係は決裂します。復讐を誓い楚を脱出した伍子胥に対し、申包胥は楚の存続を誓い、袂を分かちました。

その後、呉の将軍となった伍子胥は、昭王10年（紀元前506年）の柏挙の戦いで楚を陥れ、平王の墓を暴いて屍を鞭打つという残虐な行為を行いました。この報を聞いた申包胥は、伍子胥にその行為を厳しく問い詰めます。伍子胥は時間的な制約を理由に弁解しますが、申包胥の怒りは収まりませんでした。

楚への揺るぎない忠誠

伍子胥の復讐は、平王の後継である昭王にも及ぼうとしていました。この危機に際し、申包胥は秦に援軍を求めるべく奔走します。しかし、昭王の母が秦の哀公の娘であったにもかかわらず、哀公は援軍を拒否しました。

申包胥は、哀公の決断に心を痛め、七日七晩にわたり断食して泣き続けました。その忠誠心に打たれた哀公は、楚の無道ぶりを認めつつも、申包胥のような忠臣がいることを理由に、ついに戦車五百を投入して援軍を送ることを決断します。

翌昭王11年（紀元前505年）、秦の援軍は呉を撃破し、楚は呉の侵略から脱しました。昭王は申包胥の功績を称え、五千戸もの封地を与えようとしたのですが、申包胥は先祖の墓を守るために行動したにすぎないと謙遜してこれを辞退しました。

越への助言と呉の滅亡

時は流れ、恵王13年（紀元前476年）、申包胥は越王勾践のもとに使者として赴きます。この頃、越は呉を滅ぼす最終段階に差し掛かっており、申包胥は勾践から呉を滅ぼすための助言を求められました。

いくつかの問答の後、申包胥は勾践に「戦においては知略が第一、仁義が第二、勇気が第三である」と進言しました。この助言は勾践の呉討伐において重要な役割を果たし、越は呉を滅ぼすことに成功します。こうして申包胥は、かつての親友の復讐相手であった呉を滅ぼすことに間接的に貢献したのです。

申包胥の生涯のまとめ

申包胥の生涯は、揺るぎない忠誠心と深い知略、そして複雑な人間関係によって彩られています。親友との決別、国の存亡をかけた奮闘、そして敵国の滅亡への貢献など、彼の生き様は後世に大きな影響を与えました。春秋時代の激動期を生き抜き、楚への忠誠を貫き通した申包胥は、まさに時代の寵児であり、忠臣の鑑と言えるでしょう。彼の物語は、歴史の転換期における個人の選択と、その結果が歴史に与える影響を改めて考えさせる、貴重な教訓を与えてくれます。

参考文献

史記「伍子胥列伝」「秦本記」「楚世家」「呉太伯世家」
呉越春秋
* 春秋左[[氏伝]]

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