男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花

男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花

『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』は、1980年に公開された『男はつらいよ』シリーズの第25作。浅丘ルリ子演じるマドンナ・リリーが三度目の登場を果たし、寅次郎との恋の結末が描かれる、いわゆる「リリー三部作」の完結編として知られています。

あらすじ

夢の中で鼠小僧に扮した寅次郎は、ひょんなことから博を通じてリリーと再会。しかし、リリーはドサ回りの歌手として各地を転々とする生活を送っており、なかなか落ち着くことができません。そんな中、寅次郎は柴又に戻りますが、とらやの人々との喧嘩がきっかけで家を飛び出してしまいます。そんな時、リリーから寅次郎宛に手紙が届き、沖縄で病に倒れたことが告げられます。「もう一度寅さんに会いたい」というリリーの願いを知った寅次郎は、飛行機嫌いを克服して沖縄へ向かいます。

沖縄で再会した寅次郎とリリーは、漁師町で同棲生活を始めます。互いに惹かれ合いながらも、なかなか素直になれない二人。リリーは寅次郎との結婚を意識するような発言をする一方、寅次郎は地元の女性と浮気をしてしまいます。そんな寅次郎の煮え切らない態度にリリーはついに堪忍袋の緒が切れ、沖縄を去ってしまうのです。

リリーを追って柴又に戻った寅次郎は、とらやの人々からリリーへの想いを打ち明けられ、結婚を決意します。しかし、そんな矢先にリリーがとらやを訪れ、二人は再会を喜びますが、照れ隠しから本音を言い出せないまま、またもすれ違ってしまいます。柴又駅で別れを告げた二人は、それぞれの旅路へ。

物語のラスト、旅先のバス停で寅次郎が待っていると、一台のマイクロバスが通り過ぎます。中から降りてきたのは、なんとリリーでした。草津へ行くというリリーに誘われ、寅次郎は再び旅に出ることを決意するのでした。

スタッフ・キャスト

監督：山田洋次
脚本：山田洋次、朝間義隆
音楽：山本直純
車寅次郎：渥美清
さくら：倍賞千恵子
リリー：浅丘ルリ子

みどころ

本作の魅力は、なんといっても寅次郎とリリーの切ない恋模様です。過去のシリーズでも描かれてきた二人の関係ですが、本作では結婚を意識しながらも、互いのプライドや過去の経験から一歩踏み出せないもどかしさが、より深く掘り下げられています。美しい沖縄の風景を背景に、二人の心の機微が丁寧に描かれており、観る者の心を揺さぶります。

また、リリー三部作の完結編として、過去作からの伏線が回収されている点も見逃せません。シリーズを通して二人の関係を見守ってきたファンにとっては、感慨深い作品となっているでしょう。もちろん、本作から観始めた人でも、寅次郎とリリーの人間味あふれるキャラクターに引き込まれること間違いなしです。

音楽

本作では、沖縄民謡が効果的に使用されているのも特徴です。「ハイサイおじさん」や「十九の春」といったおなじみの曲が、物語の舞台である沖縄の雰囲気を盛り上げます。また、リリーが歌う「白浜節」は、好きな人と一緒になれない切ない心情を歌ったもので、リリーの気持ちを代弁しているかのようです。

受賞

第4回日本アカデミー賞最優秀脚本賞
第4回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞
第4回日本アカデミー賞特別賞
第5回報知映画賞最優秀主演女優賞

まとめ

『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』は、寅次郎とリリーの恋愛模様を軸に、家族や友情、そして人生の哀歓を描いた感動作です。シリーズファンはもちろん、初めて『男はつらいよ』を観る人にもおすすめできる作品です。笑いと涙、そして温かい気持ちに包まれることでしょう。

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