男性ホルモン補充療法

男性ホルモン補充療法：加齢による男性ホルモン減少と治療法

男性ホルモン、テストステロンは、男性の健康と活力に重要な役割を果たしています。骨や筋肉の形成、性機能の維持、脂質代謝、さらには精神的な側面にも影響を及ぼし、意欲やチャレンジ精神、ストレスへの対処能力にも関与しています。しかし、加齢とともにテストステロンの分泌量は減少します。40代後半から50代前半にかけて顕著になり、様々な症状を引き起こす可能性があります。

LOH症候群（男性更年期障害）：テストステロン減少による症状

テストステロンの減少により、男性更年期障害、正式には後発性性腺機能低下症（LOH症候群）と呼ばれる状態になります。LOH症候群の症状は多岐に渡り、身体症状と精神症状の両方が現れます。

身体症状:
筋肉量の減少、骨密度の低下
性欲・勃起機能の低下
体脂肪増加、特に内臓脂肪
疲労感、睡眠障害
発汗、ほてり
めまい、耳鳴り
筋肉痛

精神症状:
うつ症状
イライラしやすさ、怒りっぽさ
集中力の低下
意欲の減退
人との関わりへの意欲の低下

これらの症状は、生活の質を著しく低下させ、健康リスクを高めます。そのため、適切な治療が必要となります。

男性ホルモン補充療法：治療法と診断

男性ホルモン補充療法は、加齢によるテストステロンの減少を補う治療法です。血液検査でテストステロン値が一定基準以下である場合に、LOH症候群と診断され、治療が開始されます。基準値は国や地域によって異なりますが、症状の重症度とテストステロン値の相関関係は必ずしも明確ではないため、医師は個々の患者さんの状態を総合的に判断します。

治療法:
男性ホルモン製剤の投与: 筋肉注射が最も一般的ですが、ジェル剤による経皮投与も用いられます。アメリカではジェル剤などの経皮投与が主流ですが、日本では保険適用が筋肉注射に限定されているため、ジェル剤は自由診療となります。経皮投与は肝臓への負担が少ない利点があります。
生活習慣の改善: 食生活、運動、睡眠の質の改善も重要です。ストレス軽減のためのマインドフルネスやリラクゼーションも効果的です。
漢方薬: コルチゾール分泌の抑制を目的とした補中益気湯、DHEA分泌促進作用のある八味地黄丸などが用いられる場合があります。

治療開始前には、他の疾患がないかを確認するためのスクリーニング検査が行われます。治療効果は個人差があり、すぐに効果が現れる場合や数ヶ月かけて徐々に改善する場合などがあります。効果がない場合は、うつ病などの他の病気が疑われ、精神科、脳神経内科、内分泌科などの受診が必要となる場合があります。

男性ホルモン補充療法：副作用と禁忌

男性ホルモン補充療法は有効な治療法ですが、副作用のリスクも存在します。

肝機能異常
前立腺がん、乳がんの悪化（禁忌）
精巣萎縮、精子産生抑制（hCGホルモン併用で軽減可能）
多血症
睡眠時無呼吸症候群の悪化
* 女性化乳房、浮腫など

テストステロン値が低い場合、副作用のリスクは低いですが、定期的な検査が必要です。また、前立腺がん、乳がん、肝硬変の患者さんには禁忌です。

日本とアメリカにおける治療の現状

アメリカでは男性ホルモン補充療法が広く普及していますが、日本ではまだ普及率が低いのが現状です。これは、日本の文化的な背景、特に年齢とともに穏やかになることを良しとする風潮が影響していると考えられています。しかし、加齢によるテストステロン減少は自然な老化現象とは限りません。LOH症候群の症状に苦しむ男性は少なくありません。適切な診断と治療によって、生活の質を改善できる可能性があることを理解することが重要です。

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