男狭穂塚古墳

男狭穂塚古墳について

男狭穂塚古墳（おさほづかこふん）は、宮崎県西都市三宅に位置する、古墳時代中期（5世紀前半頃）に築造されたとされる大型の帆立貝形古墳です。西都原古墳群の丸山支群を構成する古墳の一つで、隣接する女狭穂塚古墳とともに、九州地方において最大級の規模を誇ります。

特徴

形状: 墳形は前方部が短く、円形部が大きく発達した帆立貝形の前方後円墳です。前方部を南南東に向けています。
規模: 墳丘長は176メートルと、帆立貝形古墳としては全国最大級の規模を誇ります。円丘部は3段、前方部は2段に築成されています。墳丘の周囲には二重の周堀が巡らされていますが、前方部前面には及んでいません。
築造時期: 5世紀前半頃の築造と推定されています。
陵墓参考地: 宮内庁により「男狭穂塚陵墓参考地」として管理されており、被葬候補者として瓊瓊杵尊（ににぎのみこと）が挙げられています。しかし、実際の被葬者は特定されていません。
出土品: 墳丘からは円筒埴輪が出土しています。特徴的なのは、器壁が薄く、突帯端面が細く、橙褐色（暗褐色）で黒斑が不明瞭という点です。これは窖窯で焼成された埴輪の特徴を示しています。また、女狭穂塚古墳からは異なる技法（野焼き焼成）の埴輪が出土しています。

歴史

男狭穂塚古墳は、西都原台地の中央部に築造されました。西都原古墳群は、320基以上からなる九州最大規模の古墳群で、男狭穂塚古墳と女狭穂塚古墳は、それまでの台地縁辺部に存在した6つの首長墓系列を統合するような形で築造されました。しかし、その後、西都原古墳群での古墳の規模は縮小し、南九州の盟主墳は横瀬古墳（鹿児島県）へと移りました。

1895年に陵墓参考地に治定されて以降、宮内庁の管理下に置かれていますが、宮崎県教育委員会による測量調査や地中レーダー探査なども実施されています。

墳丘の規模

1997年度の測量調査による現況値と、地中探査による推定値は以下の通りです。

墳丘長: 154.6メートル（現況値）、176メートル（推定値）
円丘部: 直径132メートル、高さ19.1メートル
くびれ部: 幅45.5メートル
前方部: 幅40.7メートル、高さ4.5メートル
内壕: 幅15-18メートル
周堤帯: 幅17-23メートル
外壕: 幅20-25メートル

男狭穂塚古墳と女狭穂塚古墳の関係

男狭穂塚古墳と女狭穂塚古墳の築造を巡っては、複数の説が提唱されてきました。

1. 男狭穂塚が先行古墳で、女狭穂塚の築造に際して男狭穂塚の前方部を破壊したとする説。
2. 女狭穂塚が先行古墳で、男狭穂塚の築造途中に女狭穂塚との重複可能性により男狭穂塚の前方部の築造を停止したとする説。
3. 男狭穂塚・女狭穂塚とも完結しており、重複はないとする説。

宮崎県教育委員会の地中レーダー探査の結果、両古墳には重複関係がないことが判明しています。両古墳は、西から伸びる小丘陵の先端部を利用して土量を確保し、限られた選地の中で最大限かつ等しい墳丘長となるように計画されたと考えられています。

出土品

男狭穂塚古墳からは、円筒埴輪が出土しています。この埴輪は、窖窯で焼成されたもので、女狭穂塚古墳の埴輪とは製作技法が異なる点が注目されます。

また、西都原古墳群の丸山支群では、170号墳出土の埴輪が男狭穂塚系列、169号墳・171号墳出土の埴輪が女狭穂塚系列と位置づけられており、男狭穂塚系列は非畿内的埴輪、女狭穂塚系列は畿内的埴輪とされています。

被葬者

男狭穂塚古墳の実際の被葬者は不明です。宮内庁は、陵墓参考地として管理し、被葬候補者として瓊瓊杵尊を挙げています。また、別の説では、被葬者を諸県君牛諸（モロカタキミウシモロ）、女狭穂塚古墳の被葬者をその娘の日向髪長媛とする説もあります。

陪塚

男狭穂塚古墳と女狭穂塚古墳の周辺には、3基の陪塚が存在します。そのうち、170号墳は、男狭穂塚古墳との関係が深いとされています。

西都原170号墳: 円墳で、直径47メートル、高さ3.5メートル。墳丘からは円筒埴輪や家形埴輪が出土しています。また、この古墳からは埴輪子持家と埴輪船が出土しています。

現地情報

男狭穂塚古墳は陵墓参考地のため、通常は立ち入りできません。ただし、西都古墳まつりの際には、特別参拝として立ち入りが許可されます。

アクセス

宮交シティバスターミナルから宮崎交通バスで、「西都原考古博物館前」バス停下車。

周辺施設

宮崎県立西都原考古博物館：男狭穂塚古墳と女狭穂塚古墳の模型などを展示しています。

参考文献

史跡説明板
『男狭穂塚女狭穂塚陵墓参考地測量報告書』宮崎県教育委員会、1999年
『西都原古墳群 男狭穂塚女狭穂塚陵墓参考地 地中探査事業報告書』宮崎県教育委員会、2007年
『特別史跡西都原古墳群 地中探査・地下マップ制作事業報告書 (1)』宮崎県教育委員会、2012年
『書陵部紀要 第47号』宮内庁書陵部、1996年
『日本古墳大辞典』東京堂出版、1989年
『日本歴史地名大系 46 宮崎県の地名』平凡社、1997年
『続 日本古墳大辞典』東京堂出版、2002年
* 『古墳時代の南九州の雄 西都原古墳群』新泉社、2017年


この情報は、男狭穂塚古墳について理解を深める上で役立つでしょう。

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