町野武馬

町野武馬：激動の時代を駆け抜けた軍人、政治家

町野武馬（1875年 - 1968年）は、明治から昭和にかけて活躍した日本の陸軍軍人、政治家です。旧会津藩士の家に生まれ、武士道精神を深く胸に刻みながら、激動の時代を生き抜きました。最終階級は陸軍大佐。張作霖の顧問として満州問題に関与し、衆議院議員としても活動しました。戦後は大日本武徳会の会長として、武道の復興に尽力しました。

会津藩士の血筋

町野武馬は、会津藩士・町野主水の次男として、現在の福島県会津若松市に生まれました。幼少期から武士の子弟としての教育を受け、会津藩最後の藩主・松平容保の息子である松平恒雄とも親交がありました。上京後、山川浩の書生となり、成城学校を経て陸軍士官学校に入学。1898年に卒業し、陸軍将校としての道を歩み始めます。

日露戦争と中国での活動

日露戦争では歩兵中尉として従軍し、旅順攻囲戦に参加。白襷隊に加わり負傷しながらも勇敢に戦いました。戦後も中国に留まり、辛亥革命では張作霖を支援。満州独立工作にも関わりました。その後、奉天督軍顧問として再び張作霖を支援し、日本の満州進出に尽力。張作霖が満州での地位を確立していく上で、重要な役割を果たしました。

張作霖爆殺事件では、偶然にも難を逃れています。町野は事件の事前に情報を得ていたわけではありませんでした。

政治家としての活動

1924年、町野は衆議院議員選挙で当選し、政界に進出。満州問題への関心を持ち続け、満州事変直前には政府に警告を発しました。また、陸軍の政治介入を憂慮し、内大臣に面会して対策を訴えるなど、憂国の士としての行動も見られました。近衛文麿を中心とした木曜会にも参加し、対英米非戦を訴えました。

町野家の歴史

町野家は、鎌倉時代にまで遡る名家です。室町時代には江州日野の町野郷を領地とし、戦国時代には六角氏に仕えました。江戸時代には会津藩の家臣として存続し、幕末には300石を食む家柄でした。山鹿素行は蒲生時代の町野家邸内で出生しています。

郷土への貢献

町野は郷土の育成にも熱心であり、稚松会の理事として若松の自宅を開放し、後進の指導に当たりました。

人となり

父の主水は「最後の会津武士」と称されましたが、町野自身も「頑固一徹の会津武士」、「荒武者」と評されるほど、強い意志と実行力を持った人物でした。日露戦争でのエピソードや、張作霖との交流など、数々の逸話が残っています。太平洋戦争後には、ジョセフ・キーナン検事の取り調べを受けましたが、その堂々とした態度と満州事変への反対姿勢が評価され、拍手で見送られたという逸話も残っています。

町野武馬は、会津武士の精神を体現し、激動の時代を駆け抜けた人物として、その名は歴史に刻まれています。

なお町野は国会図書館が行った政治談話録音の一人目の談話提供者です。

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