畝傍 (防護巡洋艦)

畝傍（うねび） - 大日本帝国海軍の防護巡洋艦

概要

畝傍（うねび）は、大日本帝国海軍の防護巡洋艦であり、フランスで建造された日本海軍初の軍艦です。1886年に竣工し、日本へ向かう途中に消息を絶った経緯があり、その行方は今も神秘に包まれています。その艦名は、奈良県にある畝傍山に由来し、正式には「畝傍艦」と称されました。

艦歴

建造経緯

畝傍の建造は1884年、フランスのル・アーヴル造船所に発注され、当時の価格は153万円でした。艦名候補には「蜻蛉」や「磐余」もありましたが、最終的に「畝傍」に決まり、初の進水は1886年4月6日です。艦の外観は従来の浪速型防護巡洋艦に比べて古風であり、3本のマストを持つバルク型です。その武装は、24センチ口径の単装砲4門、15センチ口径の単装砲7門、さらに水上魚雷発射管4門を有していました。

日本回航と消息不明

艦は日本へ向けて出発する予定が、悪天候により出港が遅れ、最終的には1886年10月18日に出航しました。乗員は日本人8名、フランス人76名、アラブ人9名を含む、総勢93名でした。しかし、12月3日にシンガポールから出航した後、南シナ海で行方不明となります。この未解決の謎は、現地の通信省や民間船舶による広範な捜索にも関わらず明らかにならず、1887年に正式に亡失認定されました。乗員の死も同時に認定され、日本海軍において若干の衝撃が走りました。

失跡の原因

畝傍の失踪にはさまざまな憶測が存在します。船体設計においては、フランス艦特有のタンブル・ホーム構造が採用されており、これにより甲板面積が狭くなると同時に、復原力に乏しい艦となってしまったとの見方があります。特に、武装が過大だったことが船の安定性を損ね、悪天候時に転覆するリスクを高めたと考えられています。

消失後、畝傍は多くの伝説や不明瞭な情報に包まれました。「無人島に漂着している」「海賊に捕まった」「清国に沈められた」といった様々な噂が広がったのです。

日後の影響

日本政府は艦の回航に保険をかけており、保険金のおかげで巡洋艦千代田を代艦として発注しました。また、畝傍と同型艦とされていた秋津洲はイギリス式巡洋艦として再設計されることになっています。この一連の出来事は、日本海軍がフランスの設計手法を見直すきっかけとなりました。艦名の畝傍は一時的に不吉な名前として評価され、この名は後の艦に受け継がれることはありませんでした。

記念碑と文献

畝傍の記念碑は青山霊園に設置されており、その艦の亡失を記念しています。また、歴史家や作家たちがこの艦にインスパイアされた作品を多く創作し、例として押川春浪の小説では畝傍が南海の孤島で新たな運命を辿る様子が描かれています。様々な伝説や脚色された物語を通して、畝傍は今なお多くの人々の記憶に残り続けています。

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