異種中間子

異種中間子：通常のクォーク模型を超えた粒子

異種中間子（エキゾチックメソン）は、通常のクォーク模型では説明できない量子数を持つ中間子の総称です。これらは、従来のクォークと反クォークの組み合わせだけでなく、グルーオンや複数のクォーク対を含む複雑な構造を持つと考えられています。

異種中間子の種類

異種中間子は、その構成要素によっていくつかの種類に分類されます。

グルーボール (グルーオニウム)：価クォークを持たず、グルーオンのみで構成される中間子。
テトラクォーク：2つの価クォークと2つの反クォークからなる中間子。
ハイブリッド中間子：価クォーク - 反クォーク対に加えて、1つ以上のグルーオンを含む中間子。

これらの粒子はすべてハドロンであり、バリオン数が0であるため、中間子として分類されます。

異種中間子の特徴

異種中間子は、通常のクォーク模型では予測できない性質を持つため、その特定と研究は非常に困難です。例えば、グルーボールは、アイソスピン、ストレンジネス、チャーム、ボトムネス、トップネスがすべて0であるフレーバー一重項でなければなりません。また、異種中間子は、ポアンカレ対称性の表現を持つ量子数JPC（Jは角運動量、Pは固有パリティ、Cは荷電共役パリティ）と質量によって特定されます。

格子QCDによる予測

格子QCDは、クォークとグルーオンの相互作用を記述する理論であり、異種中間子の性質を予測するために用いられています。現在の格子QCDによるグルーボールの予測は、仮想クォークが無視できる場合に安定しています。例えば、最も低い状態のグルーボールは、以下の質量を持つと予測されています。

0++: 質量1611±163 MeV/c2
2++: 質量2232±310 MeV/c2

また、非標準的な中間子であるグルーボールは、すべて2 GeV/c2より高いエネルギーを持つと予想されています。

実験的候補

実験データに基づいて、いくつかの粒子が異種中間子の候補として挙げられています。例えば、量子数0++を持つアイソスカラー共鳴であるf0(600)、f0(980)、f0(1370)、f0(1500)、f0(1710)などが挙げられます。これらのうち、f0(1370)、f0(1500)、f0(1710)は、グルーボールの候補として注目されています。

また、f0(980)は、テトラクォーク中間子として同定されてきました。CLEOおよびBaBar検出器で観測されたDsJ±(2317)およびDsJ*±(2460)も、テトラクォーク状態として暫定的に同定されています。

さらに、π1(1400)およびπ1(1600)は、アイソベクター異種中間子として実験的に確認されており、テトラクォークまたはハイブリッド中間子である可能性があります。

今後の展望

異種中間子の研究は、クォークとグルーオンの相互作用を理解する上で非常に重要です。今後の実験や理論研究によって、異種中間子の構造や性質がより詳細に解明されることが期待されます。特に、GlueX実験などの専用の実験施設において、グルーボールや異種中間子のスペクトルが詳細に探索されることで、新たな発見が生まれる可能性があります。

異種中間子の研究はまだ始まったばかりであり、多くの謎が残されています。しかし、その解明は、素粒子物理学の新たな地平を切り開く鍵となるでしょう。

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