異種星

異種星（いしゅせい、Exotic star）

異種星とは、一般的な恒星や中性子星のように電子、陽子、中性子といった通常の物質で構成されるのではなく、それ以外の、より根本的なあるいは未知の粒子でできていると考えられている理論上の天体です。非常に高い密度を持つコンパクト星の一種であり、自身の重力による崩壊を、構成粒子の特別な量子力学的な性質、特にフェルミ縮退圧と呼ばれる力によって支え、安定な状態を保っています。

現在考えられている異種星にはいくつかの種類があります。代表的なものとして、クォークでできたクォーク星や、その一種でストレンジ物質を含むストレンジ星、さらにプレオンと呼ばれるさらに小さな素粒子でできているとされるプレオン星などがあります。これらの天体は、標準的な物理学の枠組みを超えた極限状態や未知の素粒子の存在を示唆しており、天体物理学や素粒子物理学において重要な研究対象となっています。

クォーク星とストレンジ星

通常の中性子星は、その名の通り中性子が主成分ですが、極限的な圧力の下では、中性子を構成するクォークがバラバラの状態になる可能性があります。このような状態になった恒星は、さらに収縮して非常に高い密度を持つ仮想的な天体となり、クォーク星と呼ばれます。クォーク星は、巨大な原子核のようなものとも言えます。もし、このクォーク星がストレンジクォークを含む「ストレンジ物質」で構成されている場合、特にストレンジ星と呼ばれることがあります。

理論上の存在であるクォーク星ですが、2002年にはX線天文衛星チャンドラによる観測データに基づき、かつて中性子星と考えられていたRX J1856.5-3754と3C 58という2つの天体がクォーク星の候補である可能性が示唆されました。RX J1856.5-3754は計算されるサイズよりも小さく見え、3C 58は予想よりも低温であったため、これらは中性子よりもさらに密度の高い物質でできているのかもしれない、と考えられたのです。しかし、これらの観測結果に対する解釈については、依然として懐疑的な見方をする研究者も少なくなく、クォーク星の存在はまだ確定していません。

エレクトロウィーク星

エレクトロウィーク星は、クォーク星とは異なるメカニズムで重力に対抗する、別のタイプの異種星の理論上の形態です。この天体では、重力崩壊が「電弱燃焼」と呼ばれる過程によって阻止されます。これは、電弱相互作用によってクォークがレプトン（電子やニュートリノなど）に変換される際に放出されるエネルギーによる放射圧が、内側への収縮を押し返すというものです。

エレクトロウィーク星は、太陽の2倍程度の質量を持つ恒星の核が、およそリンゴほどの大きさにまで圧縮されたような、極めて高密度な状態で起こると考えられています。理論上、このような状態は超新星爆発の後に一時的に出現する可能性があります。クォークのフェルミ縮退圧ですら重力に抗しきれなくなった場合に形成され、その密度はクォーク星よりもさらに高くなります。しかし、このエレクトロウィーク星の状態は不安定で、1000万年以内には別の形態へ変化するか、消滅すると予測されています。

プレオン星

プレオン星は、もしプレオンという仮説上の素粒子が存在するならば、それが集まってできた非常に高密度のコンパクト星です。その密度は極めて大きく、1立方センチメートルあたり10²³キログラム（10兆トンの10兆倍）を超えると考えられています。これはクォーク星よりもはるかに高密度ですが、ブラックホールを形成するほどの密度には達しない、両者の中間のような存在です。

プレオン星は、超新星爆発のような激しい現象や、宇宙誕生直後のビッグバンの結果として生成される可能性が指摘されています。その存在を直接観測することは難しいと考えられていますが、もし存在するならば、放出されたガンマ線がその重力によって曲げられる「重力レンズ効果」によって間接的に検出できるかもしれません。また、プレオン星は、宇宙に存在する未解明の「暗黒物質」の候補の一つとしても考えられています。しかし、素粒子加速器を用いた現在の実験観測からは、プレオンの存在を示す決定的な証拠は得られておらず、むしろプレオン星の存在には否定的な結果も出ています。

プレオン星はブラックホールとは異なり、一般相対性理論によれば、その半径がシュヴァルツシルト半径よりも大きいため、事象の地平面（一度入ると二度と抜け出せない境界）を持ちません。例えば、太陽質量程度のプレオン星の半径は3キロメートル以上になると考えられており、これは同じ質量の天体がブラックホールになる場合のシュヴァルツシルト半径（約3キロメートル）よりも大きいことになります。もし地球質量程度のプレオン星が存在すれば、その大きさはテニスボール程度になると計算されています。

その他の可能性

これらの他にも、ボソンと呼ばれる種類の粒子で構成されるボソン星のような、様々な異種星の存在が理論的に提案されており、未知の天体や素粒子の性質を探る研究が続けられています。

異種星は現在、その多くが理論上の存在であり、観測的な証拠はまだ不確かです。しかし、これらの天体を研究することは、物質が極限的な条件下でどのように振る舞うのか、あるいは宇宙にはまだ知られていない素粒子が存在するのか、といった宇宙や物理学の根源的な謎を解き明かす手がかりとなる可能性があります。

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