異食症

異食症：栄養価のないものを食べる衝動

異食症とは、栄養価のない物質をむしょうに食べたくなる摂食障害です。土や紙、粘土、毛髪、木炭、チョーク、氷など、通常は食べられないものを摂取する行動が特徴です。この症状は、特に小児や妊娠中の女性に多く見られます。

ラテン語で『pica（ピカ）』とも呼ばれ、カササギが何でも口にする習性から名付けられたと言われています。

異食症の種類

異食症には様々な種類があり、摂取する物質によって分類されます。代表的なものとして以下が挙げられます。

氷食症: 氷を大量に摂取する。成人によく見られる。
土食症: 土を食べる。小児に多く見られる。
食毛症: 自身の毛髪をむしり取って食べる。小児に多く、精神的ストレスとの関連が指摘されている。

その他にも、プラスチック、石、ガラス、紙、硬貨、釘、ボルト、糞尿などを摂取するケースも報告されています。ただし、土壌が食用とされる文化圏もあるため、全ての異食が病的なものではないことに注意が必要です。また、珍しい食材や調理法を指す言葉ではなく、「奇食」とは区別されます。

異食症の原因

異食症の原因は多岐に渡り、以下のような要因が考えられています。

栄養障害・栄養不良: 特に鉄欠乏性貧血や亜鉛欠乏が原因となるケースが多く、氷食症や土食症に関連していると考えられています。妊娠中の女性では、鉄欠乏性貧血の悪化により、氷食症や生ジャガイモ、小麦粉の摂取といった異常行動が見られることがあります。これは、脳への酸素供給不足による満腹中枢や体温調節の中枢の障害が原因である可能性が示唆されています。
精神的ストレス: 強いストレスが原因となる場合もあり、食毛症や抜毛症との関連も指摘されています。セロトニン不足による感情や欲求のコントロール困難が背景にあると考えられています。
精神疾患: 精神遅滞やその他の精神疾患の合併症状として現れることがあります。
脳腫瘍: 稀なケースですが、脳腫瘍が原因で異食行動が現れることもあります。
寄生虫感染: 鉤虫症などの寄生虫感染が原因となる場合もあります。

異食症の合併症

消化不良を起こしやすい異食症では、以下のような合併症のリスクがあります。

胃炎・胃潰瘍: 消化しにくい物質の摂取による胃への負担。
イレウス（腸閉塞）: 消化できない物質による腸閉塞。

異食症の治療

異食症の症状が見られた場合は、医療機関への受診が重要です。貧血が原因の場合は鉄剤の補給が必要となりますが、症状の改善には2～3ヶ月かかる場合もあります。原因や症状に応じて適切な治療法が選択されます。

その他

アメリカのドキュメンタリー番組「My Strange Addiction」では、トイレットペーパーやガラス、洗剤などを摂取する異食症患者が紹介され話題を呼びましたが、情報の信憑性については議論があります。

関連事項

ミシェル・ロティート（異食症患者）
映画「Swallow/スワロウ」（異食症を題材とした映画）
強迫性障害
ビブリオファジー（本を食べる行為）

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