疋田景兼

疋田 景兼（ひきた かげとも）

疋田景兼は、最近の研究において戦国時代から江戸時代初期にかけて活動した有名な武将であり、兵法家としても知られています。生年は天文6年（1537年）とされており、没年は慶長10年（1605年）頃ではないかと推測されていますが、正確な記録は残っていません。その名前は、疋田のほかに侏田、引田、挽田などの異表記が見受けられます。彼は特に新陰流の剣術に精通し、上泉信綱の直弟子であることから、その影響を色濃く受けています。

来歴

景兼は加賀国石川郡に生まれ、上泉信綱の姉が彼の母であったと伝えられています。若いころから信綱に従い、剣術の修行に励んだとされています。赤城山での修行も行い、その間に信綱の世話をしながら、彼の士業に積極的に伴いました。信綱と共に長野氏に仕官し、武田氏や北条氏との戦闘で多くの功績を上げますが、長野氏が滅亡すると、信綱が武者修行に出た際に同行しました。

信綱の代わりとして柳生宗厳との立会いに臨み、三度全敗したエピソードは、後の文献において記録されています。宗厳はこの敗北をきっかけに信綱の弟子となることを決意します。景兼はその後も多くの地を巡り、織田信忠や豊臣秀次、黒田長政などに剣術を教え上達させる役割を果たしました。彼は立会いの際に「その構えは悪しうござる」と警告してから攻撃するなど、その剣術での技量を示した逸話も残しています。

さらに、景兼は一度徳川家康の前でも演武を行いましたが、その剣技について「匹夫の剣」と評され、入門を果たせなかったとも伝えられています。しかし、この評価が後世創作されたものである可能性も指摘されており、家康が新陰流の流れをくむ神影流を師事していたことを考慮すると、実際には景兼の技術に対する評価が低かったのかもしれません。

また、彼は上泉信綱以外の兵法家にも学んでおり、新当流や念流にも触れていたことが伝えられます。これにより、彼の武道に対する広い視野と技術の向上に繋がったと考えられます。

晩年

その後、景兼は丹後の細川氏に仕官しますが、文禄4年（1595年）には禄を返上し、剃髪して栖雲斎と号し再び6年間の廻国修行を行います。この頃には柳生家との関係が密接であり、宗厳の嫡男に口伝を遺していることでもその影響の深さが窺えます。修行の後、再び細川氏に仕官し、その後一時期肥前国唐津藩に仕官したとも言われています。彼の最期は不明ですが、大坂城で亡くなったとされ、慶長10年（1605年）に亡くなったとの記録がありますが、弟子たちにはそれ以降も免状を与えていたことから、実際にはもう少し後の可能性も残されています。

弟子たち

疋田景兼は多くの弟子を育て、彼らの中には山田勝興のように「疋田陰流」という流派を継承した者もいました。また、他にも猪多重能や坂井半助、香取新左衛門などが彼の教えを受けたと言われています。特に猪多重能は、景兼に学んだ槍術や薙刀を発展させ、その流儀は全国に広まりました。

関連書籍

景兼に関する物語や研究も多く存在しています。たとえば、漫画「剣の舞」や、長編小説「剣鬼・疋田豊五郎」などが挙げられます。また、斎藤光顕の著書「新の陰流」では、彼の青年時代の葛藤を描いています。

歴史上重要な人物としての景兼の影響は、後世にわたっても語り継がれ、多くの武道家や文人にインスピレーションを与え続けています。

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