病原性大腸菌

病原性大腸菌とは

病原性大腸菌とは、ヒトに下痢や腹痛などの消化器症状を引き起こす大腸菌の総称です。通常、大腸菌は病原性を持ちませんが、特定の遺伝子を獲得することで病原性を持ちます。代表的なものとして、O157やO111などの菌株が知られています。

病原性大腸菌の種類

病原性大腸菌は、感染経路や症状によっていくつかの種類に分類されます。

腸管病原性大腸菌 (EPEC)：主に小腸に感染し、下痢、腹痛、嘔吐、発熱などを引き起こします。
腸管侵入性大腸菌 (EIEC)：大腸の細胞に侵入し、炎症や潰瘍を引き起こします。症状は細菌性赤痢に似ていますが、ベロ毒素は産生しません。
毒素原性大腸菌 (ETEC)：小腸に感染し、コレラのような激しい下痢や脱水症状を引き起こします。毒素を産生することが特徴です。
腸管出血性大腸菌 (EHEC)：ベロ毒素を産生し、激しい腹痛、水様性下痢、血便などを引き起こします。重症化すると、溶血性尿毒症症候群 (HUS) を発症することがあります。O157、O26、O111などが代表的な菌株です。
腸管拡散付着性大腸菌 (EAEC)
腸管凝集性大腸菌 (EAggEC)
尿路病原性大腸菌 (UPEC)：尿路感染症（膀胱炎、腎盂腎炎）の原因となります。
髄膜炎／敗血症起因大腸菌：髄膜炎、敗血症の原因となります。

病原性大腸菌O157について

腸管出血性大腸菌 (EHEC) の一種であるO157は、特に注意が必要です。O157はベロ毒素を産生し、感染すると重篤な症状を引き起こす可能性があります。主な感染源は、加熱不十分な食肉や汚染された生野菜などです。

O157の症状

O157に感染すると、潜伏期間（3～8日）を経て、激しい腹痛、水様性下痢、血便などの症状が現れます。重症化すると、溶血性尿毒症症候群 (HUS) を発症し、腎不全や脳症などを引き起こすことがあります。特に、子供や高齢者は重症化しやすい傾向があります。

感染経路と予防

病原性大腸菌の主な感染経路は、汚染された食品や水、人から人への接触感染などです。予防のためには、以下の点に注意しましょう。

手洗い：調理の前、食事の前、トイレの後など、こまめに手を洗いましょう。
食品の加熱：食肉は中心部まで十分に加熱しましょう（75℃以上、1分以上）。
生野菜の洗浄：生で食べる野菜は、流水でよく洗いましょう。
調理器具の消毒：調理器具は、使用後に十分に洗浄・消毒しましょう。
食品の保管：食品は適切な温度で保管しましょう（8℃以下）。
安全な水の利用：水道水以外の水（井戸水など）は、煮沸してから使用しましょう。

食中毒事件の歴史

1996年には、大規模なO157による食中毒事件が発生し、社会問題となりました。岡山県や大阪府堺市などで発生した集団食中毒では、多くの患者が発生し、死者も出ました。これらの事件を教訓に、食品衛生管理の徹底や感染予防の重要性が再認識されました。

まとめ

病原性大腸菌は、食中毒の原因となる重要な細菌です。特にO157は重症化するリスクが高いため、感染予防に努めることが大切です。日頃から手洗いや食品の加熱など、基本的な対策を徹底し、食中毒から身を守りましょう。

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