症候群

症候群とは

症候群（しょうこうぐん、英: syndrome）とは、複数の症状が同時に現れる現象を指します。これらの症状はしばしば共通の病態を示し、原因が明確でない場合が多いため、同様の症状を示す患者に対して便利に扱うために、特定の名称が与えられます。基礎的な意味合いでは「同時進行」を示す言葉であり、社会現象など多岐に渡る文脈でも使用されることがあります。

名づけとエポニム

新たに認められた症候群に関して、一般的な名付けのルールは存在しません。疾患を最初に報告した医師やそのチームの名前を付けられることが多く、このように名づけられた症候群は「エポニム」と称されます。エポニムの例としては、その症状を最初に呈した患者の名前や特定の都市（例えばストックホルム症候群）から付けられることもあります。時には患者自身が自分の名を冠した命名を強く希望するという極端な事例もあります。

近年では、エポニム以外のアプローチとして症状や根本原因に基づく叙述的な名づけが進んでいますが、依然としてエポニムによる命名が広く使われ続けています。

「症候群」と「~病」の違い

原因が特定されると、その疾患は別の名称に変更されたり、他の病名と統合されることがあります。しかし、原因が明らかになっても、そのまま「症候群」という名称が長期間使われているケースも多く見受けられます。逆に、原因が特定されていないのに「~病」と呼ばれる疾患も少なくありません。この現象は特に遺伝性の症候群でも顕著です。

例：原因が特定されたにもかかわらず症候群と呼ばれる疾患

• - 重症急性呼吸器症候群（SARS）
• - 後天性免疫不全症候群（AIDS）

このように、ウイルス感染が原因と判明しているが、依然として「症候群」と呼ばれています。あるいは、ダウン症候群は第21染色体のトリソミーによる疾患であり、「21トリソミー」と呼ばれることも増えていますが、依然としてその名称は一般的です。

例：原因不明で単一疾患かも疑わしい「~病」

• - 川崎病：急性熱性疾患で空気感染が疑われるものの、原因は不明。
• - ベーチェット病：膠原病に関連しますが、原因は未解明です。

精神科領域では、多くの疾患が症候群として扱われるべきですが、便利さから「病」や「症」といった用語が用いられます。

「症候群」と「連合」の使い分け

遺伝医学では、根本的な原因となる遺伝子が明確に分かっている場合にのみ「症候群」という用語が使用されます。一方、遺伝的要因が確定していない場合は「連合（association）」と呼ばれます。これは、特定の症状が統計的に有意な頻度で現れる場合を指し、例えば2005年まで「CHARGE症候群」とされていたものは、原因遺伝子の発見により名称を変更されました。逆に、根本原因が不統一のままのVACTERL連合は、現在も「症候群」としては扱われていません。

歴史的背景

イブン・スィーナーが著書『医学典範』の中で症候群について初めて言及したとされています。さらに17世紀にはトマス・シデナムによってこの概念が洗練され、今日の病理学的理解に重要な役割を果たすことになります。

医学以外の分野での用語の使用

生物学における「シンドローム」は、特定の特徴的性質の集まりを示す場合に使われます。例えば、「送粉シンドローム」などです。また、原義の「同時進行」という意味合いから、ある原因によって同時に発生する社会的現象や一連の事態を病気が引き起こす恐れがあると例える際にも用いられます。ケスラーシンドローム、チャイナシンドローム、ファットフィンガーシンドローム、スプリットブレインシンドローム、RAS症候群などがその良い例です。

これらの複雑な医療用語の背後には、多様な歴史や医学的発展があり、現代医療においても重要な役割を果たしています。

もう一度検索