癖

癖とは

癖（くせ、クセ）とは、人が特に意識することなく、無意識のうちに繰り返してしまう習慣的な行動のことです。手足の動かし方、話し方など、特定の状況下で自動的に繰り返される傾向を指します。広い意味では習慣の一種と見なされますが、極端な場合は、通常よりも偏った反応として現れることがあります。多くの場合、本人はその癖に気づいていないか、気づいていても特に意識せずに繰り返しています。一般的に、年齢を重ねるにつれて習慣による行動が強まるため、癖が一度付くと直りにくくなる傾向があります。

ただし、呼吸や排泄など、生命維持に必要な習慣的な行動は「癖」とは呼びません。ここでは、口癖についても解説します。

習慣と癖

習慣とは、特定の状況下で繰り返される行動が、その状況に適した形で安定し、スムーズに進行することを指します。習慣は、状況に適応するだけでなく、類似の状況にも応用できるという積極的な意味を持ちます。しかし、状況が変化しても同じ行動を固執し、不適切な結果を招くという消極的な側面もあります。狭義の癖は、この後者の意味合いを指し、新しい行動の習得を妨げることがあります。

例えば、ドアのハンドルを引いて開けることに慣れていると、押して開ける必要がある場合でも、最初に引く動作をしてしまうことがあります。このような行動の固定がどのようにして習得されたかは、必ずしも明確ではありません。幼児の指しゃぶり、児童の夜尿症、成人の吃音、貧乏ゆすり、赤面恐怖なども癖として知られていますが、これらは適切な行動の固定とはみなされません。

これらの癖（悪癖とも呼ばれる）は、成長と共に自然に解消することもありますが、病的な症状として強固に残る場合もあります。これらは常同反応（stereotype response）とも呼ばれ、欲求不満から生じることが多くあります。また、常同反応を抑制することが、逆に欲求不満を引き起こすこともあります。

癖は単なる身体運動に限らず、食事の好み、他人に対する嗜好、虚言、盗み、浮浪、偏見など、広範な行動に及びます。例えば、習慣化した晩酌や食後の喫煙は、それを禁止すると心理的なストレスを引き起こし、生活に必要なものではない窃盗癖は、心理的なストレスの結果として現れることもあります。

集団と癖

癖は、人それぞれにあるという点で人間共通の現象ですが、その内容は文化によって大きく異なります。つまり、癖は個人的な現象であると同時に、集団的な現象でもあると言えます。癖のレパートリーは、性別、年齢、職業、階層などによっても異なることがあります。特に、しぐさや姿勢といった身体的な癖は、文化的な違いが顕著に表れます。通常、無意識に出てくる癖としてのしぐさは、集団内で意味を持つ身振りとは区別されます。

ある集団では癖とみなされるしぐさが、他の集団では特定の意味を持つ身振りとして理解されることがあり、時にはその意味ゆえに人前ではタブーとされる場合もあります。立つ、座る、寝るといった姿勢にも、身体技法としての側面と関連して、個人の癖を超えた文化的な型が見られます。

口癖

口癖とは、発言する際、無意識に出てしまう言葉や、意識的に好んで使う言葉のことです。無意識に出る言葉の例としては、「ちなみに」「ある意味」などがあります。これらの言葉は、特に意味を持たないことが多いです。一方、意識的に使う言葉は、その人が好む言葉であれば何でも口癖になり得ます。例えば、「これからはITだね」「だから日本はダメなんだよ」などが挙げられます。

近年では、フィクション作品において、キャラクターの性格や個性を分かりやすく表現する手段として、通常ではありえないような口癖を持つキャラクターが用いられることがあります。

癖の例

舌打ち
指の爪を噛む（咬爪症、咬爪癖）
髭を撫でる
唇を尖らす
そわそわを示す行動
貧乏揺すり

関連項目

習慣
性癖

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