発展場

発展場（はってんば）とは

発展場とは、主に男性同性愛者（MSM）が、恋愛関係を伴わない即時の性行為（即ヤリ）を目的として利用する場所のことです。有料の施設として設置された専用の発展場だけでなく、公園、公衆トイレ、銭湯など、公共の場所が流用されることもあります。一般的にはカタカナで「ハッテン場」と表記されることが多いです。

発展行為の定義

男性同士の性行為であっても、恋愛関係を経て行われる場合は「ハッテン」とは呼ばれません。あくまで、見知らぬ相手との偶発的な性行為を指します。

社会学者の石田仁氏によれば、「ハッテン場」という言葉は、有料の商業施設としての専用ハッテン場と区別するための用語として用いられています。公共の場を流用した「流用ハッテン場」は、施設管理者や他の利用者とのトラブル、警察の介入、さらには利用者同士でのトラブルを招く可能性があり、施設の閉鎖につながることもあります。

英語圏では、同様の行為は「Cruising」または「Cottaging」と呼ばれ、オーストラリアでは「Gay beat」という言葉が使われます。本項では、この流用ハッテン場と、そこで行われる男性同性愛者の発展行為について詳しく解説します。

発展場の概要

「ハッテン」は、見知らぬ者同士の即時的な同性間の性行為を指します。交際を経てからの性行為は、ハッテンとは区別されます。第二次世界大戦後、男性同性愛者が集まる場所は限られており、ゲイバーは存在したものの、異性愛者向けの接客が中心でした。そのため、ゲイ男性には「出会いの場」が必要となり、発展場が自然発生的に形成されていきました。「発展」という言葉が一般化する以前は、単に「公園」や、1960年代頃には発展トイレを「事務所」と呼んでいたそうです。

MSMから見た流用ハッテン場の利点

流用ハッテン場は、MSMにとって以下のような利点があります。

相手にアクションを起こさせる駆け引きの楽しさ
匿名で不特定多数の相手と多様な性交渉を行えること

このような非日常的な刺激が、多くのゲイ当事者に好まれています。しかし、流用ハッテン場には、「セミプロ」と呼ばれる売春目的の者や、アウティングをちらつかせて困らせる者もいます。そのため、疑心暗鬼やトラブルのリスクも高い場所です。一方、専用ハッテン場は、より安全な性交渉の場を提供しています。ゲイ向けマッチングアプリが登場した後も、流用ハッテン場は依然として出会いの場として利用されています。

「発展」の語源

異性愛者の男性で、女性関係や交友関係が盛んな人を「発展家」と呼ぶことがありますが、「発展場」の「発展」との関連性が指摘されています。ただし、どちらが先に使われたかは不明です。なぜ「発展」という言葉が使われるようになったのかも定かではありません。「性行為に発展する」や「恋愛に発展する」といった言葉から来ているという説もあります。

1963年のゲイ雑誌には「全国ホモのハッテン場」という記述が見られ、1970年代にはゲイ雑誌を通じて「発展場」という言葉が広まったとされています。また、韓国語の「ホットな場所」を意味する「핫한 방（ハッタンバン）」が語源という説もあります。

発展場の歴史

江戸時代

江戸時代初期には陰間茶屋と呼ばれるゲイバーが存在し、同性愛男性が集まっていたと言われています。そのため、発展行為が行われていた可能性も指摘されていますが、未検証です。

大正時代から昭和初期

「発展場」という言葉は使われていませんでしたが、戦前には映画館や公園がゲイ男性の出会いの場として利用されていたとされています。江戸川乱歩の小説にも、浅草公園に集まるゲイの様子が描かれています。上野公園には男娼が屯していた時期もありました。

戦後から1960年代

戦後から1960年代にかけては、公園やトイレ、映画館の暗がりが主な出会いの場でした。東京では上野公園、日比谷公園、権田原などが有名で、大阪では阿倍野区旭町が知られていました。上野公園では、警視総監が男娼に殴られる事件が起こり、取締りが強化されました。日比谷公園は、GHQ本部が近かったため、米軍人も利用していたそうです。また、各地には発展できる映画館も登場していました。

流用ハッテン場になりやすい場所

夜の公園、トイレ、海辺、映画館、公衆浴場、駅のトイレなどが、流用ハッテン場として使われることがあります。そこでゲイ男性同士が声をかけ合い、合意の上で性行為に至ります。場所はトイレや木陰など、私的ではない場所になることもあります。

違法性によるハッテン場の取締

近年、発展行為に対する対策が進んでいます。夜間の照明、トイレの閉鎖、警備員の巡回、警告の張り紙などが導入されています。新宿公園では、再整備によって死角を減らし、園路を少なくするなどの対策が取られました。公衆浴場では、「他のお客様の迷惑になる行為」が禁止されており、強制退店や刑事罰の対象となることがあります。

一部の公衆浴場では、店員がゲイにわざと近づき、手を出させて追い出すという行為も報告されています。

有料発展場の増加やマッチングアプリの普及により、公共の場での発展行為は減少傾向にありますが、依然としてハッテン行為を好む層は存在します。そのため、ゲイ向けサイトでは、公共の場での違反行為が、一般の人々に不快感を与えていることを指摘し、注意喚起が行われています。

流用発展場を狙った事件

流用ハッテン場に集まるゲイが犯罪のターゲットとなる事件も発生しています。1998年には、公園でゲイ男性が暴行を受け殺害される事件がありました。2000年には、金銭目的の少年グループによる襲撃事件も起きています。これらの事件は、過去に「アベック」が狙われた事件と類似しているという意見もあります。

流用ハッテン行為への批判と、それに対する批判

流用ハッテン場を勝手に利用するゲイに対しては、施設管理者側から批判や警告がされています。しかし、注意喚起の張り紙に対して、批判への批判が起こることもあります。鹿児島県の銭湯では、利用客からの通報や警察の指導にもかかわらずハッテン行為が改善されず、その結果、LGBT団体からのクレームや無言電話が相次ぎました。銭湯は最終的に閉店となりました。しかし、運営者は再開の意思も示しています。

脚注

(注釈、出典、参考文献は省略します)

外部リンク

(外部リンクは省略します)

もう一度検索

発展場