発炎筒

発炎筒：緊急時における視認性確保のための信号装置

発炎筒は、自動車や船舶など、主に車両に搭載される緊急用の信号装置です。鮮やかな赤色の炎を発生させる筒状の形状をしており、緊急時に停車した車両の前方に危険や障害物があることを後続車両に知らせる目的で使用されます。燃焼によって生じる明るい炎は、後続車両からの視認性を高める役割を果たします。

発炎筒内部には、ストロンチウムが混合された火薬が充填されています。種類としては、自動車用緊急保安炎筒、道路作業用発炎筒、船舶用の信号紅炎などがあります。しばしば発煙筒と混同されますが、発炎筒は煙の発生量は少なく、煙による視認性向上を目的とした発煙筒とは異なる用途を持ちます。誤って発炎筒を煙幕として使用すると、かえって視界を妨げ危険な状況を招く可能性があります。

発炎筒の種類と用途

自動車用発炎筒

正式名称は「自動車用緊急保安炎筒」で、日本工業規格(JIS) D5711によって規格が定められています。日本の道路運送車両法では、二輪車以外の自動車には非常信号用具の装備が義務付けられています。JIS D5711では、性能の維持を目的として、有効期限を4年と定めています。また、火薬類取締法上の「がん具煙火」に分類され、特定の基準を満たした製品でなければなりません。

車検においては、「JIS規格品と同等以上の性能を有すること」が求められます。一般的な性能基準としては、燃焼時間5分以上、炎の色は赤色、光度は160カンデラ以上が挙げられます。

非常信号灯

保安基準では、「160カンデラ以上の赤色光を発する」ことができれば、発光手段は問われません。そのため、LEDを使用した電池駆動型の非常信号灯も普及しており、発炎筒と同様に扱われます。非常信号灯は熱を出さないため火傷の危険がなく、磁石付きの製品は車体に固定して使用できます。また、電池が続く限り長時間使用でき、スイッチによる点灯・消灯も可能です。ただし、明るさや電池寿命には留意が必要です。

船舶用発炎筒

船舶用発炎筒は「信号紅炎」と呼ばれ、小型船舶安全規則で光度400カンデラ以上、燃焼時間1分以上の性能が求められます。救命艇には、より高性能な信号紅炎の装備が義務付けられています。具体的には、15000カンデラ以上の紅色の炎を1分以上発し、水中でも燃焼を続ける必要があります。

その他用途

発炎筒は、危険物試験や、一部ではサッカーの応援に使用されることもあります。しかし、日本のJリーグなどでは、安全上の理由から持ち込みが禁止されています。

安全上の注意

自動車用・船舶用の発炎筒は摂氏600度以上の高温で発火するため、ガソリンや油脂などが漏れている現場での使用は大変危険です。引火・炎上のおそれがあるため、注意が必要です。

歴史と関連事項

水中でも使用可能な発炎筒は、リン化カルシウムなどの物質を使用し、水と反応して発火・発光します。このような発火原理は古くから知られており、歴史的な文献にもその記述が見られます。

発炎筒と関連する事項としては、信号炎管（鉄道車両用）、照明弾、信号拳銃などが挙げられます。

まとめ

発炎筒は緊急時に重要な役割を果たす信号装置ですが、その取り扱いには注意が必要です。種類や用途、法規制、安全上の注意点を理解した上で、正しく使用することが重要です。

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