登別温泉軌道

登別温泉軌道の歴史と沿革

登別温泉軌道（のぼりべつおんせんきどう）は、北海道登別市でかつて登別駅から登別温泉街を結んでいた路面電車による交通機関です。この路面電車は1891年に遡り、温泉の旅館「第一滝本館」の創設者・滝本金蔵が駅と温泉を結ぶために馬車道を開設したことから始まりました。当初は6人乗りの馬車が運行され、温泉行きには片道2時間を要していました。

滝本金蔵の死後、彼の子供たちはこの事業を続けられず、運送業を営んでいる栗林五朔が登別温泉を再開発するために仕掛けました。栗林は交通機関の改革が必要と考え、登別駅と温泉を結ぶ軌道の設計を行います。

計画は当初、旧道に軌道を敷設するものでしたが、馬の疲労を考慮し紅葉谷経由に変更しました。この過程で住民との折衝も行われ、1915年に762mmの馬車鉄道が開通しました。この新しい鉄道によって、運行時間は温泉行きが1時間20分、官設駅行きは1時間に短縮されました。ただし、馬の暴走や故障が頻繁に発生し、馬力の限界も問題視されていました。

1917年、株主総会で鉄道の動力を蒸気機関車に切り替えることが決定され、翌年には運行が開始されました。しかし、蒸気機関車も勾配を克服することが難しく、火災のリスクも抱えていました。そこで、1923年に株主総会で電気動力への切り替えが議決され、1925年に改軌と電化が完了しました。これにより、所要時間はさらに短縮され、35分での運行が可能となりました。

しかし、昭和に入ると並行する道路の整備が進み、バスとの競争が激化しました。これにより収益は不安定に陥り、さらなる発電所の建設も検討されたものの、過大投資となる恐れから中止されました。結局、1933年には廃線が決定されました。

路線データ

登別温泉軌道の廃線時の路線データは以下の通りです。

• - 路線距離: 8.6km
• - 軌間: 1067mm
• - 停留所数: 3
• - 運行本数: 日12往復
• - 所要時間: 35-38分

この路面電車は、登別温泉の観光地としての発展にも寄与し、多くの旅館や温泉施設への輸送手段として重要な役割を果たしました。廃線後、関連事業として登別温泉株式会社が設立され、温泉の泉源を権利保有しています。特に、地元の旅館向けに給湯事業を手掛けるなど、温泉地の発展に貢献しています。

結び

登別温泉軌道の歴史は、地元の人々にとっても懐かしい記憶となり、温泉地へのアクセス向上に大いに寄与しました。その存在は、登別市の交通の歴史に欠かせない要素です。今日ではこの路線は廃止されていますが、過去の交通手段としての意義は色あせることなく、多くの思い出を人々に提供しています。

もう一度検索