白い巨塔 (1978年のテレビドラマ)

1978年版『白い巨塔』：田宮二郎の遺作にして金字塔

1978年6月から1979年1月にかけて、フジテレビ系列で放送されたテレビドラマ『白い巨塔』。主演は田宮二郎が務め、山崎豊子の同名小説を原作とする本作は、全31話、約24時間に及ぶ大作として多くの視聴者を魅了しました。特に、原作小説『白い巨塔』と『続・白い巨塔』を初めて完全映像化した点において、大きな意義を持つ作品と言えるでしょう。

田宮二郎と『白い巨塔』：強い情熱と悲劇

田宮二郎は、1966年の映画版、1965年のラジオドラマ版でも財前五郎を演じており、財前役は彼にとって特別な存在でした。映画版は内外で高い評価を受け、歴史的名作として語り継がれています。今回のテレビドラマ版でも、彼は財前五郎役への強い想いを抱き、ドラマ化を熱心に推進しました。

年齢的にも、当時43歳だった田宮は原作の財前の年齢設定（42歳）とほぼ一致しており、自身の経験と重ね合わせながら、より深く財前を表現することができたのかもしれません。長年の夢であった『続・白い巨塔』の結末まで演じるという彼の強い意志は、制作陣の協力も得て、実現しました。

制作におけるこだわりと撮影秘話

脚本は鈴木尚之が担当し、原作に忠実でありながら、登場人物の心情を丁寧に描き出しています。脇を固める俳優陣も、当時の豪華な顔ぶれが揃いました。東佐枝子や花森ケイ子の役どころは原作よりも比重が増し、ドラマに奥行きを与えています。

手術シーンのリアリティを追求するため、田宮二郎は実際にカエルの解剖を何度も繰り返したという逸話が残っています。そして、多くの手術シーンは、医師と患者の許可を得て撮影された実際の映像を使用しています。撮影は東海大学病院などで行われ、田宮の人脈が役立ったエピソードも興味深いところです。

撮影期間中は、田宮の躁うつ病（双極性障害）による感情の起伏が激しく、撮影現場は波乱に満ちていました。突如トンガへ旅行に出かけ、撮影が危ぶまれたこともありました。最終回ラストシーンの財前五郎の死のシーンでは、3日間絶食し、自ら遺書まで書き上げ、撮影に臨みました。このシーンで流れたモーツァルトのレクイエムは、実際のモーツァルトの葬儀を意識した演出として有名です。

視聴率と悲劇的な結末

撮影終了後、田宮は深い虚脱感に陥り、役者としての今後への不安を吐露していたと言われています。そして、1978年12月28日、彼は猟銃自殺という悲劇的な最期を迎えました。彼の死は世間に大きな衝撃を与え、それまで12～13％程度だった視聴率は、最終回直前には26.3％、最終回は31.4％まで急上昇しました。この視聴率上昇に対して、番組関係者からは批判的な意見も出されたとされています。

再評価と現在

放送終了後、ビデオやDVD化、そして2003年の唐沢寿明主演によるリメイク版の放送などにより、田宮二郎版『白い巨塔』は再評価されています。近年でも再放送や特別版の放送、放送ライブラリーでの公開などを通して、多くの人に視聴されています。

キャスト

このドラマには、田宮二郎をはじめ、山本學、中村伸郎、小沢栄太郎、加藤嘉など、錚々たる俳優陣が出演しています。彼らの熱演は、このドラマの大きな魅力となっています。

まとめ

1978年版『白い巨塔』は、田宮二郎の圧倒的な演技力、豪華なキャスト、そして撮影秘話の数々、そして彼の悲劇的な最期が重なり、視聴者の心に深く刻まれた作品です。ドラマとしての完成度の高さに加え、俳優の生涯と絡み合ったドラマの背景は、現在でも多くの人々の関心を集め続けています。 この作品は、日本のテレビドラマ史に燦然と輝く金字塔と言えるでしょう。

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