白井信太郎

白井信太郎：映画興行界の先駆者

白井信太郎（しらい しんたろう、1897年9月14日 - 1969年6月23日）は、演劇・映画興行の世界で大きな足跡を残した人物です。松竹の創業者である白井松次郎・大谷竹次郎兄弟の末弟として生まれ、後に松次郎の養子となり、その遺志を継承しました。白井姓は、兄弟の母方の姓に由来します。

松竹での活躍

1914年、松竹合名会社に入社した白井信太郎は、1919年に2代目市川猿之助や松居松葉らのヨーロッパ巡業団の団長として、海外の映画事情を視察しました。帰国後、彼の進言がきっかけとなり、兄たちは松竹キネマを設立。信太郎は初代蒲田撮影所長に就任し、日本の映画製作の黎明期を支えました。1920年には松竹キネマ合名会社の社長となり、翌年、株式会社化に伴い社長を大谷竹次郎に譲りました。

1926年には、映画監督の衣笠貞之助と提携して衣笠映画連盟を設立し、松竹配給の時代劇映画製作に乗り出しました。その後、1928年に松竹興業株式会社の取締役、1929年には大阪の松竹土地建物興業株式会社の専務取締役を歴任しました。また、松竹京都撮影所長として、溝口健二監督の「残菊物語」（1939年）、「元禄忠臣蔵」（1941年）では総監督を務め、映画界に貢献しました。

さらに、1931年には大谷竹次郎らと新興キネマ株式会社を設立し、松竹株式会社の副社長にも就任するなど、映画業界の発展に尽力しました。

戦後の転身と晩年

戦後、1946年に千日土地建物（後の千土地興行、日本ドリーム観光）の社長に就任。大阪[[歌舞伎座]]に進駐軍向けの特殊慰安所（キャバレー）を設置し、特殊慰安所施設協会の会長にも就任しましたが、1947年に公職追放となり辞職しました。その後、追放解除を受け千土地興行社長に復帰しましたが、経営不振の責任を取り1954年に辞任しました。

その後も、1952年に関西歌舞伎俳優協会の会長、歌舞伎座の取締役、1956年には千土地興行の会長、1960年には歌舞伎座の監査役を務め、歌舞伎界にも貢献しました。1961年には松竹株式会社の相談役に就任しましたが、1962年に大谷竹次郎が松竹社長、城戸四郎が副社長に就任したことを機に相談役を辞任しました。1968年には、長年の功績が認められ、勲二等瑞宝章を受章しました。

家族

息子に祥雄（1924年生）、娘に長女の孝子（1929年生）、三女の裕子（1933年生）がいます。

白井信太郎は、映画界の発展に貢献するとともに、戦後の混乱期には特殊慰安所運営にも関わるなど、波乱に満ちた生涯を送った人物でした。その功績は、日本の映画史に深く刻まれています。

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