白山丸 (1923年)

白山丸（はくさんまる）の歴史

白山丸は日本郵船が運航していた貨客船で、特に欧州航路での性能が際立った船でした。1923年に竣工し、本船はH型の箱根丸級の最終艦として三菱造船の長崎造船所で建造されました。このH型は、日本郵船が第一次世界大戦で失った船の代替えとして設計されたものであり、竣工時は日本郵船が所有者でなかったため、ストックボートとして扱われていました。

商船時代の活躍

1923年9月20日に完成した白山丸は、横浜とロンドンをつなぐ航路に従事し、途中に神戸や上海、香港、シンガポールなどを寄港地としていました。特に1924年1月には、フランスで亡くなった北白川宮成久王の遺体を日本に運ぶなど、歴史的な輸送任務も果たしました。新鋭船の照国丸や靖国丸とともにロンドン航路を運航し、戦争勃発間際までその地位を維持しましたが、情勢が悪化する中で1940年にはリバプールへの運航に切り替えられました。

戦時の徴用と特設艦船としての役割

1940年に日本海軍に徴用された白山丸は、特設港務艦として占領地の港湾設備を整える任務に従事しました。艦砲の設置や弾薬庫の改装を行い、1942年には特設運送船に類別変更されています。同年6月にはアリューシャン作戦に参加し、無血上陸の支援を果たしました。その後は日本軍の占領地への人員や物資の輸送任務を続けていましたが、1943年にはアメリカ軍の空襲により大きな損傷を受け、何度も修理を強いられました。

最期の航海

白山丸にとって運命的な航海は1944年のものでした。サイパンへの往復の途中、民間人を多く乗せて出港しましたが、アメリカ潜水艦の攻撃を受けることとなります。多くの女性と子供を乗せ、安全確保が最優先される中、白山丸は最初の攻撃を回避しましたが、6月4日の未明にアメリカ潜水艦からの魚雷攻撃を受けてしまいます。魚雷が船体に命中し、急速に浸水が進みました。

乗員と乗客の避難が急がれましたが、撤退作業はうまくいかず、大部分の乗客が無事ではありませんでした。特に子供や女性が多かったため、その犠牲者は非常に大きく、最終的に324人が命を落とす結果となったのです。この短期間での沈没は、設備の不備や戦況の厳しさが引き起こした悲劇的な出来事でした。

特務艦長と指揮官

白山丸の艦長には清水正心大佐が就任し、その後も数名の指揮官が交代しながら艦を率いていました。彼らは戦況に応じて艦を指揮し、さまざまな状況に対処しながら白山丸の運航に尽力しました。

このように、白山丸は日本の歴史において、平和な商船としての顔と、熾烈な戦争の中で戦った特設艦船としての姿を持つ、非常にドラマティックな船でした。

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