白川 (熊本県)

白川：阿蘇の恵みと歴史が織りなす清流

熊本県中北部を流れる一級河川、白川。その源は、阿蘇五岳の一つ、根子岳の伏流水です。環境省の名水百選にも選ばれたこの清流は、阿蘇山南部の南郷谷を西に流れ、立野で黒川と合流。その後、急流を下って熊本市街を南北に流れ分け、有明海へと注ぎ込みます。河口部では、加藤清正による干拓事業の歴史が今もなお、その痕跡を残しています。

白川の語源

古文献によると、白川の名前の由来は「時折白く濁る」ことからきているとされています。これは、阿蘇山の火山活動や雨水によって、川の水が白濁することがあったためだと考えられます。

阿蘇の恵み：南阿蘇村湧水群

白川流域には、白川水源をはじめ、竹崎水源、池の川水源など、数多くの湧水が存在します。これらの湧水群は、「南阿蘇村湧水群」として平成の名水百選に選定されており、南阿蘇村は「水の郷百選」にも選ばれています。2012年には、南阿蘇鉄道に「南阿蘇白川水源駅」が開業し、観光面でも注目を集めています。

白川水源:年間を通じて14℃、毎分60トンの水が湧き出す白川水源は、1985年に名水百選に選定されました。白川吉見神社の境内にあり、その清らかな水は多くの人々を魅了しています。

竹崎水源:毎分120トンの湧出量を誇る、豊かな湧水です。

池の川水源:毎分5トンの湧出量ながら、その存在感は地元住民に深く愛されています。

加藤清正と白川の治水事業

白川の治水事業において、加藤清正は大きな役割を果たしました。肥後入国後、自ら船に乗り、白川を何度も往復して流域を調査し、流域全体に様々な治水対策を行いました。鹿漬堰、石刎といった、その当時考案された治水技術は、現代にも受け継がれ、一部は現在もその機能を果たしています。中でも、熊本城下町の流路変更は、城の防衛と治水を両立した、加藤清正の卓越した技術を示すものです。白川を外堀、坪井川を内堀とすることで、熊本城は水堀を一つだけで済ませています。

白川の歴史：災害と復興

1953年の6・26水害は、梅雨前線による集中豪雨で白川が氾濫し、熊本市に甚大な被害をもたらしました。阿蘇山の噴火による火山灰も加わり、市街地は濁流と泥に覆われました。この災害は「白川大水害」または「6・26水害」と呼ばれ、熊本の歴史に深く刻まれています。さらに、2011年7月の九州北部豪雨でも白川は氾濫し、大きな被害を受けました。近年では2016年の熊本地震の影響で、黒川第一発電所の損壊による人命被害も発生しています。しかし、これらの災害を乗り越え、白川流域は復興に向け、努力を続けています。

白川と人々の生活：発電と交通

白川とその支流では、4つの水力発電所が稼働しています。九州電力とJNC（旧・チッソ）が運営するこれらの発電所は、地域社会に電力を供給し、人々の生活を支えています。また白川周辺には、JR九州豊肥本線、南阿蘇鉄道高森線が走り、国道57号、国道325号などの道路が整備されています。南阿蘇鉄道第一白川橋梁は、かつて水面からの高さが日本一を誇った橋梁として知られており、現在も観光客に人気です。

白川流域の観光地

白川流域には、阿蘇山、草千里、熊本城など、多くの観光地が存在します。豊かな自然と歴史的建造物が調和した、魅力あふれる地域です。

白川：未来への継承

立野ダムの建設は、白川の治水対策における新たな取り組みです。このダムは、治水機能と環境保全の両立を目指した穴あきダムとして注目を集めています。白川は、これからも阿蘇の恵みと人々の暮らしを支えながら、その歴史と自然を未来へと繋いでいくでしょう。

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