白河別業

白河別業（しらかわべつぎょう）

白河別業は、9世紀から11世紀にかけて、藤原摂関家によって利用された別邸です。別名、白河殿や白河第とも呼ばれ、平安京と鴨川を挟んで位置し、東海道も通る交通の要衝にありました。この地は、政治の中心地からも近く、摂関家にとっては重要な拠点の一つでした。

歴史

白河別業の始まりは、人臣最初の摂政となった藤原良房が、この地に別業を営んだことによります。良房の没後、白河別業は、基経、忠平と摂関家の嫡流によって継承されました。11世紀に入ると、藤原道長がこれを所有し、その後は嫡男の頼通に引き継がれました。道長の娘で頼通の姉である上東門院彰子は、出家後この地を住まいとしました。

道長の時代には、庶流の藤原済時や公任も白河に別業を設けたため、道長の所有する白河別業は「大白河」、それ以外は「小白河」と区別されました。白河は、桜の名所としても知られ、春には多くの人々で賑わいました。摂関家当主は、ここで観桜の会や詩会、蹴鞠、競馬などの行事を催し、天皇の行幸も度々行われました。

天皇の行幸

白河別業は、その美しい景観と文化的な重要性から、天皇の行幸がしばしば行われました。寛弘元年（1004年）には花山天皇が花見のために訪れ（『御堂関白記』）、長元5年（1032年）には後一条天皇が翫花（花をめでること）のために訪れました（『日本紀略』）。また、康平3年（1060年）には後冷泉天皇が祖母である上東門院の見舞いを兼ねて観桜のために行幸しています（『日本紀略』）。これらの記録は、白河別業が当時の貴族社会において、いかに重要な場所であったかを示しています。

法勝寺へ

承保元年（1074年）には、藤原頼通と上東門院が相次いで病没し、翌年、頼通の後を継いだ藤原師実が、時の白河天皇（上東門院の曾孫）に白河別業を贈りました。白河天皇は、この地に師実の実兄である覚円を置き、寺院（法勝寺）としました。法勝寺は、後に「六勝寺」として知られるようになりましたが、戦国時代末期に廃寺となりました。

現在の姿

現在の岡崎公園、京都市動物園周辺が、白河別業の跡地であると考えられています。往時の面影は残っていませんが、この地がかつて、都の中心で重要な役割を果たしていた歴史を物語っています。白河別業は、平安時代の貴族文化や政治の動きを今に伝える貴重な場所であり、その歴史的な価値は非常に高いと言えるでしょう。

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