白津山

白津山（しらつやま）

白津山は、秋田県北秋田市と能代市にまたがる山です。かつて旧合川町のシンボルとして親しまれ、地元中学校の校歌にもその名が歌われています。

白津山と正法院

北秋田市鎌沢にある曹洞宗寺院、正法院は「鎌沢の大仏」で知られていますが、その山号は白津山に由来します。元々は白津山の山頂付近に寺院があったと伝えられています。修験道の行者が山を下り、現在の場所に移されたのは1657年（明暦3年）のこと。沖田面の福昌寺の安室舜泰大和尚を開山として迎えました。

『房住山昔物語』によれば、房住山の大施主である高倉長者の実子が釜ヶ沢（現在の北秋田市鎌沢）に住み、一帯を小兄ヶ沢と呼んだとされています。1134年（長承3年）には、小阿仁の山中（現在の能代市濁川と三種町の境）に梵字宇山（房住山）大幢寺がありました。大幢寺は山本郡と北秋田郡にまたがる霊場で、多くの里寺を有していました。

現在、白津山の合川側に300mほど下った地点に、かつての白津山正法院の寺跡ではないかと言われる場所があります。そこは緩やかな斜面になっており、幅は約10m。急な崖や杉の植林により、発掘調査は困難を極めています。

三里の宝篋印塔と白津山正法院

北秋田市合川町三里には4基の宝篋印塔があります。明治時代には、石川理紀之助がこの地を訪れ、『旧跡考』に「五輪台の墓標」として記録しました。そこには「白津山正法院という寺跡」であると記されています。ただし、北秋田市の公式サイトでは、この説を裏付ける明確な証拠はないとしています。

民話

昔、山本郡森岳の山口に池内角左衛門という長者がおり、藤子と竜子という二人の女中がいました。藤子は美しく、多くの若者から言い寄られていましたが、彼女は白津山の修験者に恋をしていました。しかし、修験者は道心堅固で、藤子の想いに応えませんでした。悲嘆した藤子は田代潟に身を投げてしまいます。竜子は藤子の死を知り、主人に報告。主人は藤子を哀れみ、湖畔に白藤神社を建立して霊を慰めました。

白津山の交通

白津山の峠道は、かつて能代市（旧二ツ井町）田代と旧合川町を結ぶ重要な道でした。1647年（正保4年）の『出羽一国絵図』にもその存在が記録されています。久保田藩は、秋田郡小阿仁郷であった田代村を山本郡に編入しました。田代村の人々は、沖田面の福昌寺、杉花の常光寺、鎌沢の正法院などの寺院に所属していました。現在でも、小阿仁地区では田代村との婚姻関係を語る人が多く、田代では正法院の檀家が最も多いです。

現在の峠道は林道（峰越林道）となっており、1981年（昭和56年）に開通しました。

白津山を通った人々

菅江真澄は1805年（文化2年）に、羽根山沢から白津山を超えて田代村に向かいました。その様子は日記『みかべのよろい』に詳細に記述されています。彼は白津山の紅葉の美しさや、遠くに見える岩手山の風景を描写しています。菅江真澄はまた、田代潟と「澤はたち（羽立沢）」の絵図を残しています。

秋田戦争の際には、仁鮒村から秋田藩の十二所隊などが田代村からの道案内を先頭に白津の山越えを行いました。1868年8月27日、十二所隊等は仁鮒から田代村へ出て、米内沢を経て南部藩兵を防ぎました。

登山

旧合川町と旧二ツ井町を結ぶ林道の最高点付近から、ヤブの道を約0.7km進むと山頂に到達します。山頂は平坦な杉の造成地で、現在はヤブ化が進んでいます。かつては二等三角点「仁鮒」があり、ベンチも設置されていました。

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